ザ・ファーム阿蘇のゾーニング案(出所:熊本県)
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 熊本県は、2016年4月に発生した熊本地震により甚大な被害を受け、全面再開を断念した旧東海大学阿蘇校舎(農学部)について、使用していない校舎用地を活用し、「ザ・ファーム阿蘇」構想を推進することにした。熊本県のブランド牛であるあか牛の生産を手がけるくまもと阿蘇県民牧場を中心に、理念に賛同する民間企業が事業主体となり、あか牛の繁殖や肥育を核とした研究開発や生産、販売の拠点をつくる。熊本県と旧校舎が所在する南阿蘇村、東海大学はこの取り組みを支援。産官学が連携し、地方創生やSDGsを実践するとともに、災害からの新たな復興モデルとなる取り組みにする考えだ。2026年度のオープンを目指す。

 ザ・ファーム阿蘇は、観光農場ではなく、アカデミックで実業にも貢献できる次世代型農場として設立する。あか牛の繁殖・肥育を通じて、阿蘇の草原や水資源の保全と再生を目指すとともに、東海大学が培ってきた加工技術などを生かした製品化にも取り組む。

 くまもと阿蘇県民牧場の事業案によると、ザ・ファーム阿蘇には、研究開発部門と生産・販売部門を設ける。研究開発部門では、加工食品開発や未利用資源の発掘・商品開発のほか、ICTを活用したスマート農業や低環境負荷の農業などの研究を行う。生産・販売部門では、あか牛、野菜、果物などの農産物生産と加工食品製造、食品販売や飲食サービスなどに加えて、地域づくりコンサルティングや食農教育などのサービスも提供する。このような第1次産業にとどまらない、各産業の技術と知恵を組み合わせた製品やサービスの創出・提供を通じ、地域資源を生かしきる産業を創造し、利益を出す産業、人材を引きつける魅力ある産業、時代や社会をけん引する産業に育てる構想だ。

 具体的な事業内容は、2021年度に各種調査を行ったうえで決定するが、中長期の事業戦略の方向性としては、(1)「阿蘇草原の保全」と「あか牛生産」を核に循環型資源活用産品「阿蘇ブランド」を創設、(2)2050年の阿蘇カーボンニュートラル農業の達成に向けたSDGs社会の研究と実施を目指す。

 旧東海大学阿蘇校舎は、南阿蘇村の黒川地区にある。同地での全面再開は断念したが、現在は阿蘇実習フィールドとして活用。農学部の学生による実習が再開されている。被害を受けた旧1号館と地面に表出した断層は、熊本県の震災ミュージアムとして整備され、一般にも公開されている。一方で、体育館や野球場など使用されなくなった用地も多く、これらの有効活用が課題となっていた。県と南阿蘇村、東海大学で活用策を検討するなかで、くまもと阿蘇県民牧場から提案を受け、同構想の発表に至った。