「メガソーラービジネス」2021年5月2日付の記事より

 小田原市と京セラ、A.L.I. Technologies(東京都港区)、REXEV(東京都千代田区)、湘南電力(小田原市)は、東京電力パワーグリッド(東電PG)の既存配電網を利用し、太陽光と蓄電池などによるマイクログリッドを構築する。4月28日に、「小田原市における地域マイクログリッドを活用したエネルギーマネジメント事業に関する協定」を締結した。

 マイクログリッドの範囲は、小田原市久野にある総合公園と娯楽施設で、「小田原こどもの森公園わんぱくらんど」「小田原市いこいの森」「フォレストアドベンチャー・小田原」の3施設になる。災害時など停電の際、東電PGの電力系統から独立して3日間程度、電力を自給する体制を構築する(図1)。

図1●小田原市役所で開かれた締結式の様子
図1●小田原市役所で開かれた締結式の様子
(出所:日経BP)
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 「小田原こどもの森公園わんぱくらんど」内に出力50kWの太陽光発電設備のほか、容量1580kWhのリチウムイオン蓄電池、調整力ユニット、電気自動車(EV)充放電設備を設置する。調整力ユニットとは、最大消費電力約30kWの演算サーバで、稼働率の柔軟性が高いため、需給バランスの調整に活用できる。今年秋までには、これら設備を導入し、運用を開始する予定(図2)。

図2●マイクログリッド内に設置した約50kWの太陽光発電設備
図2●マイクログリッド内に設置した約50kWの太陽光発電設備
(出所:A.L.I. Technologies)
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 マイクログリッド対象エリアには、東電PGによる6.6kVの高圧配電線が敷設されている。同地域の電力系統が停電した場合、電柱にある1カ所の開閉器を切ることで3施設の配電網が上位系統から解列され、独立して運用できるようになる。

「クラウドソーラー」を自家消費

 3施設の最大電力需要は日中50~60kWなので、1580kWhの蓄電池からの放電で3日程度、電気を賄えるという。晴れで太陽光発電が発電できれば、自立運転可能な期間はさらに伸びる。太陽光出力が需要を上回る場合などは調整力ユニットで需給バランスを維持する。

 一方、平常時には、「わんぱくらんど」の太陽光発電設備や3施設外にある住宅太陽光の余剰電力を自己託送の仕組みで顧客に提供するスキームを目指しており、その際、蓄電池と調整力ユニットを適切に活用して需給バランスを維持する(図3)。

図3●平常時と非常時での運用イメージ
図3●平常時と非常時での運用イメージ
(出所:京セラ)
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 今回のプロジェクトでは、新しいタイプの自己託送として、野立て太陽光設備を共同所有したケースや、複数の住宅太陽光からの余剰電力を集めた場合などを想定している。こうしたスキームを「クラウドソーラー」「仮想区分型自己託送」と呼び、経済産業省が示した自己託送を認める累計のうち、「再エネ電源の主体と需要家に間に密接な関係があるグループ内融通」での運用が可能か、今後、同省に確認しながら進めていくとしている(関連記事:経産省、「コーポレートPPA」容認へ、自己託送制度の活用で)。

自営線の敷設コストを削減

 今回の事業における役割分担は、以下になる。京セラは、プロジェクト全体の取りまとめ、太陽光パネルと蓄電池の導入・運用、地域エネルギーマネジメント(REM)を活用したマイクログリッド内の需給バランス、電圧・周波数安定化を行う。A.L.I.は、調整力ユニットおよびREMの導入、ブロックチェーン技術を活用した再エネ共有モデルの構築などを担当する(図4)。

図4●調整力ユニット(演算サーバ)を収納したコンテナ。A.L.I. Technologiesが運用する
図4●調整力ユニット(演算サーバ)を収納したコンテナ。A.L.I. Technologiesが運用する
(出所:日経BP)
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 REXEVは、EVの提供およびEVによる調整力基盤としてのEVエネルギー管理システム(EVEM)を構築する。 湘南電力は、地域新電力としての地域内への電力供給、平常時における電力の需給管理・調整を担当する。小田原市は、エネルギー施策との連携、取り組みの周知・発信を行う。

 今回の事業は、昨年9月に経産省の令和2年度「地域の系統線を活用したエネルギー面的利用事業(地域マイクログリッド構築事業)」に採択されたもの。

 一般送配電事業者の既設配電網を活用した地域主体のマイクログリッドとしては、北海道松前町での蓄電池併設型風力を利用する構想や、宮城県大衡村の工業団地におけるガスエンジン発電設備を電源にした構想がある。今秋に小田原市のマイクログリッド関連設備が完工し、災害時を想定した独立運用試験を実施できれば、既存配電網による、国内で初めての実運用段階でのマイクログリッド事業になる(関連記事:松前町「マイクログリッド」構築へ、風力と蓄電池で全町自立)。

 従来、災害時のレジリエンスに備えた地域マイクログリッドでは、自立型電源と重要施設などを自営線で結ぶことで系統停電時の電力自給を実現した例があった。宮城県東松島市の「スマート防災エコタウン」や千葉県睦沢町の「むつざわスマートウェルネスタウン」、福島県葛尾村の「葛尾村スマートコミュニティ事業」などが、一定の成果を上げている。ただ、こうした「自営線マイクログリッド」は自営線の敷設コストが大きくなる課題があった(関連記事:国内初! 太陽光と蓄電池による「自営線マイクログリッド」)(関連記事:「千葉大停電」下でも、道の駅と住宅に電気と熱を供給)。

 一般送配電事業者の既存の配電網を活用し、非常時に柱上開閉器の操作で系統から独立した運用を実現できれば、レジリエンス対応の地域マイクログリッドの構築費用が大幅に低減できることになる。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/050501976/