敷地内の建物配置図(出所:鎌倉市)
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 鎌倉市は、市街化調整区域に立地し、長く低未利用となっている梶原四丁目用地(野村総合研究所跡地)について、官民連携による利活用を進めるために、このほど事業を担う民間事業者の公募手続きを開始した。事業の名称は梶原四丁目用地利活用事業。公益的サービスと民間収益事業を両立させ、これらを民間事業者側のリスク負担で実施する公共的収益事業の形で実施する。

 事業は、市の収入増加や不動産の維持管理適正化だけでなく、雇用の創出や地域課題の解決、官民連携による新たな価値を創造するまちづくりに取り組むことを目的とする。応募を希望する事業者は、7月22日までに参加資格審査申請書などの必要書類を提出する。応募に先立ち、7月8日に現地説明会を実施する。参加希望者は7月3日までに所定の申込書を電子メールで提出する。

 梶原四丁目用地は、野村総合研究所が1966~87年まで本社所在地としていた場所だ。1990年まで利用され、その後、2002年に、市に土地と建物が寄贈された。同地は、鎌倉市のほぼ中央に位置し、周辺は緑地に囲まれている。約17万m2の敷地の大部分が緑地で、平坦地は建物周辺とグラウンド、アプローチ道路などの約4万m2。敷地の一部は、国指定史跡「北条氏常盤亭跡」にも指定されている。

 敷地内には、延べ床面積7209m2の本館をはじめ、1966~81年にかけて建設された4棟の建物がある。また、敷地前面の鎌倉市道と、建物のある平坦地との間は約700mの距離があり、「野村橋」と呼ばれる橋で結ばれている。現在、老朽化した建物は閉鎖されているが、グラウンドを含む自然豊かな敷地を、スポーツや散策に利用できるように一般開放している。

 市は、寄贈を受けた2002年以降、利活用を検討してきた。2017年度には公募によるサウンディング型の市場調査も実施。その結果も踏まえ、2018年3月に策定された「鎌倉市公的不動産利活用推進方針」では、「自然環境を生かした利活用(市民への開放を含む)と企業誘致」という基本方針が示されている。具体的には、豊かな緑に囲まれた広大な敷地を生かし、研究・開発系の企業誘致と、敷地解放による市民の憩いの場の提供や講座開催などの市民との交流、共同研究などの産学連携といった利活用がイメージされている。

 この方針も踏まえ、今回、公表された募集要項では、市は、同事業において民間事業者が担う事項として以下の4点を挙げている。既存建物の撤去または改修/既存橋の補強または架け替え/提案施設の整備、維持管理および運営/公益事業の実施だ。このうち、公益事業の実施とは、市や地域の価値を高める公益的サービスの提供を指している。

 事業スキームは、事業者は、市から事業用定期借地で約17万m2に及ぶ事業対象地全体を借り受け、事業者の負担により提案施設を整備する形となる。まず、事業者は既存建物の撤去と既存橋の補強または架け替えに要する費用を算出し、その金額を差し引く形で、市が事業対象地の貸付料を算出。その後、提案施設の竣工までに事業用定期借地権を設定し、借り受ける流れになる。提案施設の竣工後は、同施設と補強または架け替え後の既存橋、およびグラウンドや散策路など事業対象地全体の維持管理、運営を行う

 提案施設は、既存の建物と駐車場がある範囲に整備し、延べ床面積は、従前の建築確認申請における延べ床面積1万5698.56m2の1.5倍未満とする。用途は、市街化調整区域であることから、これまでと同じ用途の「研究所」、または、同用途としない場合は「医療・福祉施設」「文化施設」「事務所」とする。

 公益事業については、必須事項として、事業対象地の一般開放、山地(提案施設と駐車場以外の部分)などの日常管理・環境保全・安全管理、利便施設(常時使用可能なトイレ)の提供、事故・災害時の協力の4点が課せられている。このほか、任意事項として、「鎌倉市まち・ひと・しごと創生総合戦略」で掲げる目標、「働くまち鎌倉」、「住みたい・住み続けたいまち鎌倉」の実現に資するサービスの提供が期待されている。例としては、事業者のノウハウを生かした地域人材の育成や地場企業の支援、先端技術を用いた地域課題解決・実証実験などが挙がっている。

 このほか、既存施設の取り扱い、収益事業、公益事業、土地の貸付料など条件の詳細は、募集要項に定められている。事業用定期借地権設定契約の締結時期、終了時期は事業者の提案によるが、設定期間は30年以上50年未満の範囲とする。

 同事業に応募できるのは、安定的な事業実施が可能で、借地料の支払い能力を十分に有する法人、または法人のグループだ。応募者は、7月22日までに参加資格審査申請書などの必要書類を提出した後、参加資格審査と提案内容に関する事前対話を経て、10月2日までに提案書を提出。10月19日にプレゼンテーションを実施する。審査は、事業実施方針(基本方針や実施体制、実績、収支計画など)、収益事業(事業内容と施設計画)、公益事業(一般開放、環境保全、地域課題の解決、地域産業への貢献など)について各200点、計600点満点で実施する。優先交渉権者の選出は11月頃となる予定だ。