医療現場がイノベーションの拠点に

 2020年度から新たにHealthTech推進事業に参画した東北大学病院 病院長の冨永悌二氏は、「新しい医療は医療者だけでは作れない。企業や自治体と一緒になって創出していく必要がある」と意気込む。

東北大学病院 病院長の冨永悌二氏(写真:キックオフイベントの画面キャプチャー)
東北大学病院 病院長の冨永悌二氏(写真:キックオフイベントの画面キャプチャー)
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 東北大学病院は、かねて企業との連携を進めてきた。産学連携の取り組みの一つとして、東北大学病院臨床研究推進センターにバイオデザイン部門を設置し、企業で働く人が直接医療現場に入ってニーズを探索できる機会を設けている。過去5年で45社の企業を受け入れ、6件の新規事業と18件の特許出願につながった実績があるという。

 例えば、金属加工のめっき技術を持つ企業は、体温調節整水槽や排水まわり、感染制御チームなどの現場を見学し、医療機器の洗浄に着目。同社の技術を生かして、手術機器洗浄液を商品化した。「百聞は一見に如かず。企業の方に臨床現場を見てもらえたから製品化に至った」と冨永氏は振り返る。

 2020年からは、これまで病床として使っていた場所をテストベッドとして企業に提供し、製品化や実用化を支援する「OPEN BED Lab」を開設した(関連記事:あの東北大学病院が企業向けに病床を開放)。これは、フィンランドのオウル大学病院の取り組みを参考にしたといい、医療機関の内部に企業が入ることによって、産学連携で先進的に課題解決に取り組むことを狙う。企業にとっては、すぐそばで医療者が働いているため、評価やアドバイスを受けやすいなどのメリットがある。

フィリップス・ジャパン 代表取締役社長の堤浩幸氏(写真:キックオフイベントの画面キャプチャー)
フィリップス・ジャパン 代表取締役社長の堤浩幸氏(写真:キックオフイベントの画面キャプチャー)
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 こうした取り組みを受けて、当初からHealthTech推進事業に協力しているフィリップス・ジャパン 代表取締役社長の堤浩幸氏は、今後は医療機関の位置づけが変わると見る。医療機関が生活の中心かつイノベーションの拠点になるとし、「実際の医療現場に行ければ、机上の議論では分からないことが見えてくる。この環境を生かさなくてはいけない」と強調した。

 連携によって創出した製品やサービスを国外にも届けたい東北大学病院にとっては、フィリップス・ジャパンのようなグローバル企業と医療を作れることが「千載一遇のチャンス」(冨永氏)だとする。医療現場のニーズやアイデアを同社のグローバルな視点で検証したい考えだ。

(タイトル部のImage:キックオフイベントの画面キャプチャー)