兵庫県加古川市、綜合警備保障(以下、ALSOK)、西日本電信電話(以下、NTT西日本)、ジョージ・アンド・ショーンの4者は、2019年11月をめどに実証実験を始める。高齢者の認知症に起因する行方不明事案などを解決するため、実証実験を通じて、ICT(情報通信技術)とAI(人工知能)を活用した新しい見守りサービスを検討するのが目的。期間は2021年3月までを予定している。8月5日に4者が締結した「見守りサービスにおける健康延伸サービスの実証実験に関する覚書」に基づく取り組みだ。

実証実験の概要(出所:加古川市)
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 実証実験では、NTT西日本とジョージ・アンド・ショーンが共同開発しているMCI(軽度認知障害)の検知エンジンを利用する。各種端末やセンサーから取得する対象者の行動や睡眠のログ、室内情報などのデータを、AIを活用したMCI検知エンジンで分析し、MCI期にある認知症の発現を日常的な行動の変化から予知・検知する。

 MCIは、認知機能の低下が見られるものの日常生活に支障を来さない範囲にとどまるため、周囲に異変を気づかれにくい。しかし、早期に発見して対策を講じれば、回復および進行を遅らせることにつながる。

 実施対象は、加古川市内で戸建て住宅か一般集合住宅に居住する65歳以上の個人。協力した場合、実証実験で使用するサービスの無償提供、定期的に実施するスクリーニングテストの結果提供などを行う。

 加古川市はこれまでALSOKと連携し、小学校の通学路をはじめ、学校、公園や駐輪場などの周辺、また主要道路の交差点に見守りカメラ約1500台を設置し、子供の通学時や外出時の安全確保を進めてきた。また、ビーコンタグ(BLEタグ)検知器を内蔵する見守りカメラによって、子供だけでなく、行方不明の懸念がある認知症の罹患者の位置情報履歴を、保護者や家族に知らせる見守りサービスの普及にも取り組んでいる。

 今回の実証実験では4者が協力し、この見守りサービスで蓄積してきた位置情報などのデータベースをMCI検知エンジンに活用することで、健康寿命延伸と社会保障費削減につながる新たなサービス(健康寿命延伸サービス)開発の有効性などを検証する。実証実験では、既存の見守りサービスにおいて構築したインフラを活用する。

 実証実験での知見を生かして加古川市とALSOKは、さらなる健康増進に寄与するスマートシティづくりを目指す。NTT西日本とジョージ・アンド・ショーンは、MCI検知エンジンのさらなる機能向上を図り、認知症を含む様々な疾患の予測を進めるとしている。

 「平成29年度高齢社会白書」によると、加齢に伴い発症率が増加する認知症患者数は、2025年には約700万人に達し、65歳以上の5人に1人が認知症になるとの推計がある。認知症患者と患者家族の支援、早期発見の体制整備など、認知症患者を受け入れる環境構築が社会全体で急務となっているなか、今回の実証実験の成果が注目される。