総務省は、自治体が誘致または開設に関与した企業のサテライトオフィスの開設状況を調査し、結果を公表した。回答したのは47都道府県と、サテライトオフィス開設中の企業444社のうち176社。調査では、サテライトオフィスを、都市部の企業などが本拠から離れたところに設置する遠隔勤務のためのオフィスの総称とした。オフィスの管理主体や活用形態は問わない。

 2018年度(平成30年度)末までのサテライトオフィスの開設総数は512社。ただし68社が撤退したため、開設(総)数から撤退数を除いた設置数(開設中のサテライトオフィス)は444社だった。13年度末に75だった設置数は毎年純増を続け、5年間で6倍弱に増加した。

年度別サテライトオフィス開設(撤退)数の推移(出所:総務省)
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 都道府県別の設置状況における上位5団体は、北海道と徳島県がともに最多で64社。次いで島根県43社、宮城県35社、長野県25社となっている。6位以降は、和歌山県、宮崎県、山口県、福島県が続く。

都道府県別サテライトオフィス開設数(2018年度末時点)(出所:総務省)
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 一方、サテライトオフィスの形態については、独自事務所が64%、シェアオフィス型が35%、未回答1%だった。

 オフィスの入居形態は、常勤の要員を配置する「常駐型」が71%、常勤の要員を配置しないで短期的に利用する「循環型」が27%、未回答2%だった。常駐型オフィスにおける常駐社員数は1~5人が70%を占め、循環型オフィスにおける滞在期間は月1~2週間程度が52%と過半だった。

サテライトオフィスの形態など(出所:総務省)
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企業が求めるのは人材確保と地元定着への支援

 自治体からの回答では、サテライトオフィス進出による波及効果として、「地元出身者、U・Iターン者の雇用の受け皿(移住希望者の増加)」「交流人口・関係人口の拡大」「近隣住民や地元自治会等との連携・交流等による地域の活性化」「遊休施設・空き家等の活用」「地元企業等の連携等により地域産業の成長に寄与」などが挙がった。

 半面、課題として「人材の確保(雇用確保等に係る支援)」「地元同業者等の理解」「定着への取り組み」「初期投資等の軽減」という指摘があった。自治体の回答からは、サテライトオフィスの誘致・開設が、地域の社会および経済の活性化に寄与している様子がうかがえる。

 一方、サテライトオフィス開設中の企業に対して、開設に際してどのような行政の支援が有益だったかを尋ねたところ、「地元大学向け(人材確保のための)企業説明会の開催等、採用活動に対する支援」という人材面のサポートに加えて、「物件紹介、暮らし環境のサポート、町内の個人や団体、企業への紹介のサポート」「地元企業等とのビジネスマッチング支援」「地域課題に関する情報提供(新たなビジネスチャンスに係る情報提供)」などの回答が集まった。地域の事情に通じた行政の支援を評価する声が目立つ。「各種補助・助成金、固定資産税の減免等」の経済的な支援も評価されている。

 企業に対して、今後の課題や行政への要請を尋ねた質問には、「人材の確保」「遠隔地で行う業務の切り分け・運用と、当該業務を行う社員の定着が課題」という人材に関する意見が出た。また、「サテライトオフィスと他拠点の移動手段・経費等に関する支援等」「新たなビジネス創出に向けた支援(地域課題の掘り起こし等)」「地元住民、企業・商工会、大学等とのマッチング支援・交流の場の提供」も回答に挙がった。

 企業がサテライトオフィスを開設する場合、自治体が誘致や開設に関与しないケースもあるが、調査結果からは、行政の支援により経営上の負担軽減やサテライトオフィスの定着・増加につながる可能性がうかがえる。

 しかし、行政の支援があってもなお、企業側はサテライトオフィス開設における人材確保に苦労しているようだ。その結果、循環型が増えて、「サテライトオフィスと他拠点の移動手段・経費等に関する支援等」が課題になっているとの見方もできそうである。そもそも労働人口が減少するなかで地元企業との間で人材の取り合いになっては本末転倒だ。

 総務省は、サテライトオフィスを開設する企業の業種や目的までは明らかにしていない。ただし、地元企業とサテライトオフィスを開設する企業との橋渡し役として、また、人材や取引先のきめ細かなマッチングの場面で、地域の情報が集まる自治体や行政関係者に期待される役割は小さくないといえる。

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