地域医療政策の創出をテーマに報告

 満武巨裕・医療経済研究機構研究副部長/上席研究員は、「医療・介護ビッグデータ基盤と分析ツールを利用した地域医療政策の創出」をテーマに報告した。三重県の29市町および後期高齢者医療広域連合から地域の医療・介護・健診に関するビッグデータを取得・分析したところ、住民がどこの医療機関に行っているかや、特定の診療報酬点数の加算がどこの病院で使われてるかといったことを可視化できたという。「可視化ツールを保健所や地域医師会などに提供している。自治体からは出産・育児のデータや生活保護のデータも一緒に分析してくれないかという話が来ている」(満武副部長)と今後の取り組みへの期待を話した。

 康永秀生・自治医科大学特別特命教授(東京大学大学院教授)は、「ビッグデータを用いた医療の可視化と罹患・重症化リスク分析」をテーマに報告した。主に熊本県などからレセプトデータを集めて時系列化し、匿名化IDによって医療体制の可視化や個人レベルの重症化予測モデルの構築に取り組んだ。重症化予測モデルの構築の実用化にはまだ時間がかかるが、肺炎の重症患者をどの程度延命治療をすればいいかが予測できるようになるという。「この予測モデルを脳卒中や骨折、心不全などに広げていく」(康永特別特命教授)としている。

 最後に、橋本英樹・東京大学大学院教授が、「ビッグデータによる医療・介護需要将来予測とその社会実装」をテーマに報告した。シミュレータを開発し、国民生活基礎調査や人口動態統計、国勢調査の個票などなどを組み合わせ、心臓病や脳卒中など14の疾患や障害の状態や次に新しい病気が発生する確率を計算した。その結果、高齢者は増えるが、脳卒中と心臓病の患者数は減る。一方で、糖尿病は現在の予想よりもっと多くなるといった結果になった。「シミュレータの情報公開サイトを開設しており、政策効果だけではなく、新規技術を導入した場合のバジェットインパクトの計算などができると期待している」(橋本教授)という。

 シンポジウムには約240人が参加し、プロジェクトの成果報告に耳を傾けるとともに、携帯型自動血圧計などの実機やデモンストレーションなどの展示コーナーで説明員に熱心に質問していた。