東京都は、江戸川区の葛西臨海水族園に、PFI方式で新しい水族園を建設する。2021年12月9日に「葛西臨海水族園(仮称)整備等事業」を特定事業として選定したことを発表した。都立の動物園・水族園におけるPFI導入は初めて。

葛西臨海水族園のシンボルであるガラスドーム。2020年撮影(写真:日経アーキテクチュア)
葛西臨海水族園のシンボルであるガラスドーム。2020年撮影(写真:日経アーキテクチュア)
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 日本を代表する水族園の一つである葛西臨海水族園は、上野動物園内にあった水族館を移転・拡充して1989年に開園した。近年は老朽化のほか、展示を裏で支える飼育スペースの狭さなどが課題になっている。PFIの導入により、施設の改善やサービス向上を目指す。PFIを導入した場合の都の財政負担は、従来の分離分割発注方式に比べ3%ほど減るという。

 都が2021年9月に公表した実施方針によると、今後は2022年1月に入札を公告、9月に落札者を決定して12月に事業契約を結ぶ予定。2022年12月~2027年9月に新水族園を設計・建設し、開業準備を経て2028年3月末に開業する計画だ。事業の契約期間は2048年3月末まで。

 事業はPFIの「BTO方式」によって行う。PFI事業者は新水族園を設計・建設した後、未使用のまま都に引き渡して、維持管理を担当する。具体的には、新水族園の(1)整備、(2)開業準備、(3)維持管理、(4)レストラン・カフェの運営――を担う。(1)~(3)に対する金額(サービス対価)が都から支払われるほか、(4)による収入も得られる。

 一方、飼育や売店運営などは、現在と同じく指定管理者(現在は東京動物園協会)が担当する。PFI事業者と指定管理者の担当領域を分けた理由について、東京都建設局公園緑地部計画課の担当者はこう話す。

 「飼育には高い専門性が必要だ。売店も、水族園の展示動物に結び付く商品があり、専門性を生かしている。動物の特徴を踏まえた、凝ったぬいぐるみなどは、知識のない人にはデザインできない。飼育する人がよく見ているのでできる。一方でレストランは、民間企業に企画力やノウハウ、ニーズを捉える力がある。多店舗を展開していれば、スケールメリットも生まれるかもしれない」

2020年10月公表の「葛西臨海水族園の更新に向けた事業計画」に示された、新水族園での展示イメージ(資料:東京都)
2020年10月公表の「葛西臨海水族園の更新に向けた事業計画」に示された、新水族園での展示イメージ(資料:東京都)
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 PFI事業の応募者は、複数の会社で構成することを都が求めている。設計、建設、工事監理、維持管理の会社だけでなく、外食関係の会社も構成員になる可能性もある。

 東京動物園協会は、ジャイアントパンダ5頭が暮らす上野動物園を含め、都立の動物園・水族園を計4園、指定管理者として運営している。同協会によると、葛西臨海水族園の2020年度(20年4月~21年3月)の入園者数は33万6135人で、前年度に比べ73.5%減少。新型コロナウイルス禍による長期休園が響いた。

 都が2020年10月に公表した事業計画では、新水族園の延べ床面積を2万2500m2とした場合、施設整備費が約243億5000万~275億2000万円(税込み)、年間の維持管理費が約17億6000万円(同)と試算している。

計画敷地の位置。新水族園は現水族園の近くに建設する(資料:東京都)
計画敷地の位置。新水族園は現水族園の近くに建設する(資料:東京都)
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 新水族園は、現水族園の近くに建設する。新水族園に機能を移した後の現水族園をどうするかは都が検討中。建築家の谷口吉生氏が設計した現水族園は、屋上のガラスドームなど様々な特徴がある。日本建築学会が2019年2月に保存活用の要望書を出すなど、保存を求める声が上がっている。