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リポート

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「国立公園満喫プロジェクトシンポジウム」リポート(1)

国立公園ステップアッププログラム、先行8公園の取り組み

訪日外国人利用者の拡大に向け、民間事業者との連携も

茂木 俊輔=ライター【2018.1.16】

日光、伊勢志摩、大山隠岐


●日光国立公園

 栃木県の中禅寺湖・男体山から那須にかけて広がる日光国立公園が掲げるコンセプトは、「自然・歴史・文化 美しい『日本』を感じられる東京圏のプレミアムリゾート」。2015年に19万人だった訪日外国人利用者を2020年には50万人まで拡大することを数値目標として掲げている。

 さまざまな取り組みの中から紹介したのは、ビジターセンターなどへのカフェ導入試行と自然体験ガイドの養成事業の2つだ。

 カフェ導入試行を検討しているのは、那須連山の麓に広がる「那須平成の森」の拠点施設であるフィールドセンター。施設内部にカフェ利用可能なスペースはないうえに、上下水道が整備されておらず、火気使用も禁止されていた。そうした制約のある施設で利用者にくつろいでもらう目的から、カフェ導入試行に向けた検討を始めた。

 事業者の公募前には、自然公園法、国有財産法、食品衛生法という3つの法律上の取り扱いを整理。自然公園法上は公園事業の一環と位置付け、環境省がカフェ事業者との間で協定を交わした。国有財産法上は、使用許可の対象を収益行為として占有するカウンター部分だけに限定することにした。食品衛生法上求められる手続きには、施設全体の管理者である環境省が年間5日以内の「臨時出店届」を提出することで対応することにした。

 一方、地元との連携を図ろうと、コンセプトデザインを地元在住のクリエーターに依頼し、カフェ営業時のみ使用する組み立て式カウンターを作成。カフェに用いるテーブルなども、住民参加のワークショップ形式で制作した。

 試行開始は2017年6月から。同年6月には地元の社会福祉団体が1日間、同年10月には公募で選ばれた地元カフェ事業者が3日間にわたって実施したところ、コーヒー、クッキーなどを来館者の2~3割が購入するという結果だった。収益は那須平成の森基金に募金するように事業者と協定書を交わしている。今後の課題としては、(1)地元貢献と安全確保を実現できる事業者の公平な選定方法、(2)損益分岐点の判断、(3)効率的な運用方法の検討、(4)周辺事業者からの理解という4点を挙げた。

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カフェ試験導入の結果(当日の発表スライドより)

 ガイド養成事業は、既存ガイドの能力向上と新規ガイドの育成を目的にしたものだ。2016年度から4年計画で取り組んでいる。ガイドが自ら作成したプログラムで生計を立てていけるようにすることが目標だ。課題の1つは、多言語対応。栃木県が英語での研修を実施しているため、県と連携し育成に取り組む。もう1つは、育成したガイドの組織化だ。この点は、満喫プロジェクトの中で検討していくという。


●伊勢志摩国立公園

 紀伊半島の東部、三重県内の4つの市町にまたがるのが、伊勢志摩国立公園だ。

 特徴は、リアス式海岸や内陸部の常緑広葉樹などの豊かな自然を背景に、真珠養殖、海女漁、伊勢神宮など地域の歴史や文化を持つ点だ。公園面積の96%が私有地で、園内には多くの人が居住する。そのため地域の歴史・文化や生活・風習などにふれることができ、人の営みと自然との関わりを深く感じられるという。コンセプトには、「悠久の歴史を刻む伊勢神宮 人々の営みと自然が織りなす里山里海」を掲げる。

 満喫プロジェクトでは、(1)受け入れ環境の向上、(2)観光コンテンツの向上、(3)景観の保全、(4)情報発信の強化という4つの課題に対し、(1)上質な展望環境と快適な利用環境の整備、(2)観光資源の磨き上げによるストーリー性を持った質の高い自然体験の提供、(3)人々の営みと自然が織りなす優れた景観の保全という3つの視点から、6つの取り組みを定めている。これらの取り組みによって、2015年に3.3万人だった訪日外国人利用者を2020年に10万人に拡大することを目指す。

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まちなみの景観改善に取り組む(当日の発表スライドより)

 具体の取り組みに関しては、三重県の担当者が登壇し説明した。例えば「まちなみの景観改善」では、課題共有のため公園内市町で合同勉強会を開催したほか、電線の地中化などにも取り組む。また「インバウンド対応の施設整備」としては、志摩市内にある横山展望台で「天空カフェテラス」を整備中。2018年夏のオープンを目指す。


●大山隠岐国立公園

 鳥取県と島根県にまたがる大山隠岐国立公園は区域が飛び地状に指定されている。面積はそう広くないが、山、草原、島の多様な景観や、日本神話や山岳信仰と自然が融合した人文景観が特徴だ。「日本の大地の成り立ちが刻まれ、神話・信仰が息づく山・島・海」をコンセプトに掲げる。広域周遊ルート「緑の道」のモデルコースにも位置付けられ、広域連携DMO(観光地経営組織)として日本版DMOに登録されている一般社団法人山陰インバウンド機構が国内外の商談でプロモーションを展開しているという。

 事業報告で紹介した取り組みは、(1)保全の仕組みづくり、(2)引き算の景観改善(廃屋や雑多な広告看板など景観を阻害する施設を撤去するなどして再整備すること)、(3)キャンプ場の改革、(4)アクセス環境の改善、(5)プロモーションである。

 保全の仕組みづくりでは、三瓶山の草原景観維持に向けて、伐採した木材をまきにしたものや地元飲食店のハンバーガーの売り上げの一部を維持活動に寄付する循環型プログラムを構築した。

 キャンプ場の改革では、大山蒜山エリアの環境省直轄野営場4カ所を2019年度中までに再整備する予定で基本計画を策定中。新たなキャンプニーズの取り込みや周辺との一体的な利用、民間事業者のノウハウ活用などを踏まえた整備を目指し検討を進めている。また2017年11月にはスノーピークへの委託事業として、蒜山キャンプ場を核にモニタリングキャンプを開催。アウトドア関係の有識者や地域の行政・観光関係者などが、サイクリング、地域の食材を用いた料理を組み合わせたプログラムなどを体験し、蒜山の魅力の発信方法やキャンプ場の活用方法などに関して意見を交わした。

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キャンプ場改革の概要(当日の発表スライドより)

 さらにプロモーションでは、日本在住外国人の交流サイト(SNS)を通じた魅力発信を促そうと、国際パークサポータープログラムを立ち上げた。この事業報告の時点では13カ国・19人が登録済みという。

 環境省大山隠岐国立公園管理事務所所長の中山直樹氏は「2018年には、山の日記念全国大会が鳥取で開催され、大山開山1300年祭が予定されている。これらのイベントとも連携し、効果的にプロモーションを進めていきたい」と、今後への意気込みを語った。

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