ローカル5Gで地域の製造業復活の可能性

 本高氏は「ものづくりの町・北九州では、クローズドなネットワークであるローカル5Gが有効だ。これまでICTに取り残されがちだった製造業において、コストを抑えながら付加価値を高めるためのトリガーになるはずだ」という。

 「ローカル5G」とは、自治体や企業など通信事業者以外が自ら構築するネットワークで、インターネットにつながらない“独立性”、必要な場所・期間に対応できる“柔軟性”、通信障害などの影響を受けにくい“安定性”を特徴とする。機械の遠隔操作やテレワークなどへの活用が期待されている。

ローカル5Gの概要と用途例(資料:総務省「第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望」〔2019年6月〕より)
ローカル5Gの概要と用途例(資料:総務省「第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望」〔2019年6月〕より)
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 この日ファシリテーターを務めたコワーキングスペース秘密基地(北九州市小倉北区)代表の岡秀樹氏は次のように補足する。「これまで、ものづくり産業はICTと相性が悪かった。なぜなら、インターネットにつながると、国際特許などの高度な企業秘密が流出する恐れがあるからだ。しかし、ローカル5Gの登場で、セキュリティーの高い高速ネットワークが構築できるようになる」

左から、コワーキングスペース秘密基地代表・岡秀樹氏、本高氏、リョーワR-Vision事業部 事業部長・津田貴史氏、Houyou代表取締役社長・福岡広大氏、カラビナテクノロジー執行役員・森正和氏、CAVIN代表取締役社長/CEO・Yuya Roy Komatsu氏
左から、コワーキングスペース秘密基地代表・岡秀樹氏、本高氏、リョーワR-Vision事業部 事業部長・津田貴史氏、Houyou代表取締役社長・福岡広大氏、カラビナテクノロジー執行役員・森正和氏、CAVIN代表取締役社長/CEO・Yuya Roy Komatsu氏
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 地元企業からの期待も大きい。

 不良品を抽出するAI外観検査システムを供給するリョーワ(北九州市戸畑区)だ。同社R-Vision事業部 事業部長の津田貴史氏は「現在は工場の1ラインに1台ずつ、約800万円のAI 機器を設置しているが、ローカル5Gならサービスとして提供できるので、月額1万円程度で済むようになる」と語る。遅延がないので作業機械の遠隔操作も実用化できる。「産業構造ががらりと変わる可能性さえある」(津田氏)。

 IT事業やコワーキングスペースの運営を手掛けるHouyou(北九州市小倉北区)の代表取締役社長・福岡広大氏は、新たな事業として災害時の復旧・復興支援に取り組んでいる。ここ2〜3年、水害などが起きた場所にボランティアに赴き、実情を見てきたという福岡氏は「被災地では、衛生面や安全面から人手による作業が困難な場合がある。5Gとロボットやドローンを組み合わせれば、スムーズな復旧作業が可能になる」と語った。

 システム・アプリ開発やWebサイト制作のカラビナテクノロジー(福岡市中央区)執行役員の森正和氏は「ローカル5Gとインターネットを組み合わせることで、セキュリティーが重要なデータと、オープンなソースをミックスしたマーケティングプロダクトを提供できる」と語る。

 CAVIN(福岡市中央区)は、花農家と小売店が直接取引できるサイトを構築している。代表取締役社長/CEOのYuya Roy Komatsu氏は「花の会社がなぜ5G? と疑問に思われるかもしれないが、実は活用の場は多い」という。「まず、日本の優れた生産技術を、ウェアラブルデバイスを利用して東南アジアなどに輸出できる。そして物流。自動運転の実現には大いに期待している」。

 会場には、ARとVRを組み合わせたMR端末も用意され、議論の後に体験会も行われた。事前に体験したファシリテーターの岡氏は「5Gでは“空間の伝送”ができる。これまでのリモート会議は2Dの対面だったが、5Gなら異空間で直接出会うかのような体験ができる。情報量がまるで違う」と語る。カラビナテクノロジーの森氏は「5Gなら仕事も教育も、在宅のままで可能になる。時間の有効活用にもつながる」と指摘した。