スーパーシティの鍵を握るデジタル人材の育成・確保

(左)片山さつき 参議院議員(元国務大臣(地方創生・規制改革・女性活躍等)/自民党総務会長代理/自民党デジタル人材の育成・確保小委員会委員長)、(右)村林聡 三菱UFJリサーチ&コンサルティング代表取締役社長。特別対談「日本型デジタル社会実現に向けて」でスーパーシティやDX人材などについて討論した

 2018年、第四次安倍内閣で地方創生や規制改革の特命担当大臣を兼任していた片山さつき氏は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング代表取締役社長の村林聡氏との特別対談「日本型デジタル社会実現に向けて」に登壇した。

 片山氏は「スーパーシティ構想」発案の経緯について次のように振り返った。

 「当時様々な事情でスタックしていた規制改革の状況を打開するためにスーパーシティ構想の法制化を進めた。当時も今も民間企業のトップからは、日本では規制が厳しく新しいテクノロジーを用いたチャンレジできる実装の場がない、海外でやるしかない、という意見も多く耳にする。このままでは国益が損なわれる。国全体の規制を変えようとしてもはかばかしくないが、自治体レベルならばできると考えた」

 片山氏は、スーパーシティ法案の整備について2つの成果を紹介した。1つは、課題設定、事業計画、技術など構想全体をリードする「アーキテクト」と呼ばれる職務の役割を明確にしたこと。もう1つが、複数のサービスをつなぐデータ連携の際に、データや指示をやり取りするときのルールを定めたAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の標準化だ。

 APIを利用すれば複数のシステム(例えば、タクシーの配車予約と病院の通院予約など)を、必ずしも一つのシステムに統合する必要はなく、大きく手を加えずにそれぞれのシステムを連携することが可能になる。

 「これまでの日本の情報システムは個別バラバラに作られて相互に連携することが困難だった。しかし、新しい価値はつなぐことで生まれる。システムに完成形はない。情報システムの更改期が来ないと対応しない、という従来の進め方ではなく、常にアップデートしていくことが大切だ。トップにはアジャイルな判断が求められる」と片山氏は指摘した。

 2020年10月に自民党に設立されたデジタル社会推進本部のもとに作られた「自民党デジタル人材の育成・確保小委員会」の委員長を務める片山氏は、課題としてデジタル人材の不足について言及した。

 「スーパーシティの鍵を握るのは、デジタル人材だ。しかし現状の日本には圧倒的に不足している。デジタル化とは、論理的、科学的な考え方で仕事をすることだ。理系/文系という縦割り的な発想を超えて、業務フローの整理やデータデザイン、それぞれの職務で何をやるべきかの評価基準などを定義できるデジタル人材の育成・確保が急がれる」(片山氏)

 「参考にしたいのはシンガポールの取り組みだ。2020年までに5万人のデジタル人材を生み出した」と片山氏は述べた。「日本では50万人規模が必要になるとも言われる。自動車などこれまで日本の基幹産業を支えてきた理系人材のコンバートやキャリアデザインの見直しも求められるだろう」(片山氏)。さらに同委員会では、高校、専門学校、大学などにおける教育カリキュラムなどについても議論を深める考えだという。

 かつて内閣府で公文書管理委員会の専門委員を務めたことがある三菱UFJリサーチ&コンサルティング代表取締役社長の村林聡氏は、「日本の企業は突発的に生じた問題や例外的な仕事もアナログ的に柔軟に対応する人材の能力が高く、それがデジタル化の遅れの一因とも考えられる。その状況から脱するには、人材と成果を適切に評価するためのジョブディスクリプション(職務定義)が重要になる。日本企業も常にアップデートしていく組織に変わらないといけない」と指摘した。

 片山氏は、「スーパーシティの説明会には『地域の問題だから』と党派を超えて議員が聞きに来る地域がある。スーパーシティは1000万人を超えるような大都市だけのものと誤解しないでほしい。世界のほとんどが小規模な都市だ。日本で公募中のスーパーシティには市町村問わず応募している。むしろ、地方のクリエイティビティが解き放たれているように思う。そうした取り組みから生まれる利便性や人々の幸せというものは、少子高齢化が進む他の国々からも注目される」と期待を述べた。