「パーソナル屋台」で能動的なまちを

 象の鼻パークやテラスのような公共空間に、「パーソナル屋台」を創出することで、まちはどのように変化するのか――。田中氏は「個人の力を引き出すことを後押しするまちとなり、やがてそのまちは能動的な『意志あるまち』として市民に選ばれる」と説明する。

 さらに田中氏は「行政は明文化したルールに基づいて場を管理する見守り役から、さらに一歩踏み出して、その場にいる人間同士のコミュニケーション自体に関わるようになる。そんな『意志ある行政』の出現を期待したいし、そんな時代が来ている」と、新たな行政の役割についての期待を語った。

 イベントのメーン会場となった現在の「象の鼻テラス」は、平日はビジネスマンがお昼にお弁当を持ち寄る休憩場所として、休日はカップルや家族連れの憩いの場所として多くの市民が来訪している。「象の鼻テラス活動記録集」によると年間来館者数は、オープン初年度の2010年度の25万830人から、2017年度は45万3434人と、約1.8倍に増えている。

「象の鼻テラス」は、横浜三塔などのランドマークへの景観に溶け込み、ランドスケープと一体化した設計となっている。港に向いた壁には大きなガラスが使われており、室内から港や海を一望できる。周囲の丘面に敷き詰められた芝生に埋もれたように建つ。平屋建てで延べ床面積は約600m2(写真:小林直子)
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写真左の建物が象の鼻テラス。奥には横浜港の観光名所、横浜赤レンガ倉庫も見える(写真:日経BP総研)
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 象の鼻テラスを運営するワコールアートセンターの大越晴子氏は、パーソナル屋台のイベントを開催した理由を次のように語る。「今回のフューチャースケープ・プロジェクトは、アートによって、象の鼻パークやテラスの利用者にとってのよりよい環境づくりを模索する実験。パーソナル屋台を実践することで、市民自身が公共空間のあり方について考え、話し合う機会を生み出すことが狙いだ」。

 さらに大越氏は、フューチャースケープ・プロジェクトの実施に向けて「エリア一帯と共同したイベント開催などを想定し、安全管理を確保した上で、柔軟な対応による調整が可能な体制づくりに努めたい」と語った。