ケース2 Yanasegawa Market(埼玉県志木市・館近隣公園)
~公園活用のマーケットから生まれる多様な効果~

 埼玉県志木市の館近隣公園では、数カ月に1度、地域マーケット「Yanasegawa Market」が開催される。普段は何の変哲もない公園が、マーケットがある日は大勢の人が集い活気づく。

Yanasegawa Marketの様子。親子連れなどで賑わい、活気にあふれている
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公園内での開催のため、子供たちが自由に遊べる(写真:左右2点とも稲垣憲治)
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 このYanasegawa Market は、主に地域の店舗・個人で構成された約30店舗が出店し、10時~14時までの4時間の開催で来場者数は約1400人になる。主催しているのは、書籍『マーケットでまちを変える』の著者で、マーケットの企画や運営、研究に携わる鈴木美央氏だ。

 販売されているものは、パン・野菜などの食料品、ハンドメイド雑貨、ミニ盆栽、絵本など多岐にわたる。サービスでは、マッサージや似顔絵などもある。一方、本マーケットが、地域性や公園本来の魅力を活かしたデザインを重視しており、お祭りなどで良く見るコテコテの屋台は1つもないことに気づく。

 出店者のほぼすべてが、この地域に居住しているか店舗を構えており、地元主体の構成になっている。販売者は若い人が多く、本業の人、副業でやっている人、趣味的に出店する人など、バックグランドも様々なようだ。

 訪れた日の全店舗の延べ購入者数は約1500人、総売上金額は約112万円であった(各店舗へのアンケートにより集計)。30店舗4時間の開催での売り上げとしては少なくない。

 分析の結果、この日のマーケットによる売り上げのうち、およそ半分の約60万円が「地域の稼ぎ」として地域で回っていることが分かった。地域外出資の郊外ショッピングモールなどと比べて、その割合は極めて高い。

 試算のために設定した仮定・前提は以下の通り。

  • 2018年10月28日開催回について分析している。各店舗の利益・仕入の支出先などについては各店舗へのアンケートにより集計
  • 地域を「朝霞地区4市(朝霞市、志木市、和光氏、新座市)周辺」と定義したため、地方税は考慮していない

 地域にとって、地域マーケットのメリットは、直接的な経済面のみにとどまらない。地域コミュニティの形成、地域の魅力向上なども見込める。

 この日一番感じたことは、出店者が皆、楽しそうであるということだった。実際に、Yanasegawa Market出店者へのアンケートでは、出店目的の第1位が「楽しい・雰囲気が好き」(30店舗中22店舗)、そして第2位が、「地域の賑わい創出に貢献」(30店舗中17店舗)であった。地域マーケットが、町への愛着・シビックプライドを醸成していることが分かる。

 また、この日のYanasegawa Marketでは、志木市商工会青年部のイベントが同時開催されていた。こうした地域の連携により、その効果はより高まるだろう。

 もう1つ印象的だったのが、親子連れがマーケットで買い物をし、公園でくつろいでいる姿を多く見かけたことだ。マーケットという場による効果で、公園空間の本来の魅力が引き出され、出店者、来場者どちらにとっても心地よい空間が形成されたようだ。近年の公共空間の活用への関心の高まりもあり、こうした公共空間における地域マーケット事業のニーズはさらに拡大していくのではないか。

Yanasegawa Marketのインスタグラム。マーケットの様子がたくさんの写真で紹介されている。

 出店者にとってのメリットも売り上げだけではない。マーケットでは顧客と直接会話ができるため、市場ニーズや自分の商品への顧客の反応を見られること、少ない初期投資で商売を開始できるためスタートアップの場としても活用可能なことなどが挙げられる。

 マーケットで自作の商品を売り始めたことがきっかけで、出店者の才能が開花するケースもある。この日のYanasegawa Marketにおいて、4時間で10数万円(!)を売り上げた店舗(ハンドメイド雑貨)の店主は、趣味が発展して作家としてマーケットでの販売を始めた地域の住民だ。今後、常設店舗やオンラインショップなどのビジネスとして発展していく可能性を秘めている。

 こうしたマーケットの地域に対する効果を、主催者の鈴木氏は「15の効果」として以下のように整理している。

マーケットがまちに生み出す15の効果(『マーケットでまちを変える』〔鈴木美央、学芸出版社〕より)
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