地域内のプレーヤーによる実践が「地域の稼ぎ」を増やす

 本稿では、分散型ホテル事業と地域マーケット事業という2つの事業について、地域の稼ぎに主眼を置いて紹介してきた。これら2事例の分析から言えることは、地域のプレーヤーによる実践が「地域の稼ぎ」を増やすということだ。また、実践にあたっては、自らのノウハウのもと、地域の資源が十分に活用されていることが分かる。分散型ホテル事業は、地域の魅力がそのままホテルの魅力になるため、地域の魅力をいかに発掘して発信するかが重要となる。私自身、谷中は見知った地域だったが、文化体験できる施設など、hanareを通じて知ることができた場所も多く、谷中という地域をさらに魅力的に感じるようになった。

 地域マーケット事業についても、地域の中核となる公園を洗い出し、地域店舗などから魅力ある出店者を募ることが重要になる。Yanasegawa Marketにおける出店者募集においても、マーケット全体の魅力を高めることのできる魅力ある地域の出店者(地域の魅力を伝えられる出店者)に対して、主催者は直接出店交渉を行っている。

地域の資源を活用し、「低リスク」で事業化

 このような地域の既存資源が活用された取り組みは、従来型の大型開発と比べて極めて「低リスク」であるという点も付け加えたい。

 従来型のホテルもショッピングモールも、ニーズを読み間違えればオーバースペックになってしまうし、開設当初は賑わっても建設後に人口減少や競争相手の出現などで顧客数が減れば事業の存続は危うくなる。一方、空き家を活用した分散型ホテルは、そもそも宿泊室となる施設が地域にあるため大規模な整備を必要としないし、顧客数を踏まえた客室増設(空き家のリノベーション)ができ、スモールスタートも可能だ。

 地域マーケットについても、マーケットは仮設であり場所の変更も可能なため、規模やニーズに応じてその姿を柔軟に変えることができる。

 今後の人口減少社会における地域活性化には、このように地域主体で、柔軟で、そして「地域の稼ぎ」はしっかりある事業の開発が重要になるのではないか。

稲垣憲治(いながき・けんじ)
京都大学 プロジェクト研究員
文部科学省を経て、現在東京都庁職員。環境・エネルギーやまちづくりへの思いが高じ、業務時間外に京都大学プロジェクト研究員としても活動中。2018年3月、新・公民連携最前線に「設立相次ぐ『自治体新電力』、本当に地域にお金が回るのか」を寄稿。
* 本コラムの作成にあたって、hanareについては宮崎晃吉氏(HAGI STUDIO代表取締役、日本まちやど協会代表理事)、Yanasegawa Marketについては鈴木美央氏(同マーケット主催者、『マーケットでまちを変える』著者)にご協力いただきました。ありがとうございました。
* 本稿は、京都大学における研究活動の過程で調査・考察した個人的見解であり、所属する団体の見解を示すものではありません。ご意見・コメントなどは、inagaki_energy@yahoo.co.jpまで。
* 本稿で紹介した2事例の「地域の稼ぎ」などはいずれも速報値であり、今後のさらなる調査により変更になる可能性があります。
* まちづくり事業(空き家対策、公園活用など)における「地域の稼ぎ」算出を検討しています。まちづくり事業に関する各種データを提供いただける方、アドバイスいただける方、上記メールアドレスまでご連絡いただけますと幸いです。