「DIY都市」における多用な市民参加――Code for Japan・関代表理事

 Code for Japan代表理事で、政府CIO補佐官を務める関治之氏は、「私はもともとITエンジニアで、ITという技術を使って地域を良くしたいと考えて活動をしてきた。ただ、『自動運転や遠隔医療、ドローンなどが普及して世の中が便利になる』といった未来像については、『便利=幸せ、ということではないのでは?』と疑問を感じた」という。

 関氏は、「こうした未来像では、テクノロジーの進化が「お客様」「消費者」の感覚で活用されることによって、よいまちが出来上がっていくということになっている。だが、それだけは地域の豊かさを逆に殺しかねないのではないか」と懸念する。そうではなく、自ら手を動かすことが大事だ考えた関氏らがCode for Japanで提唱・展開しているのが「DIY都市プロジェクト」(DIY=Do It Yourselfの略)だ。ここでは、①幸せなまちの在り方のKPI化、②市民参加型のまちづくり推進、③複数自治体が相乗りできるDIYのためのツールセットをつくることに取り組んでいるという。

 関氏は、バルセロナなど海外で多く活用されているオープンソースの参加型民主主義のツール「Decidim(デシディム)」を日本語化して活用していく取り組みを紹介。既にデシディムを活用している兵庫県加古川では、地元の高校生など10代の参加者が約4割、スマホからのアクセスが6割を超えるなど、これまでのやり方ではリーチできなかった市民も積極的に議論に参加している状況を紹介した。さらに「オフラインのワークショップの内容もデシディムのプラットフォーム上に載せていくことがきる。デジタルが苦手な人たちも含め、多様な人たちに参加してもらうことで、住民の政策リテラシーは上がっていくだろう」と関氏は、参加型のまちづくりに期待を寄せる。

(セッションにおける関氏の発表資料より)
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「地域の幸せ」を見出す指標とは

 セッションの後半は、スマートシティ・インスティテュートが検討を進めている「Liveabe Well-Being City(リバブル・ウェルビーイング・シティ)指標」を含め、幸福なまちづくりの指標の在り方について議論が進められた。南雲氏はウェルビーイングなスマートシティの指標の在り方として、「人間中心主義」「市民参加」「世界的な枠組みとの整合的な枠組み」といった方向性を示し、「適切な範囲で見たときの地域にはそれぞれ個性がある。均質化するのではなく個性を我がまちの魅力として、互いの良さを認めて学び合える道具としてつかってもらえるような指標が必要だ」と概観した。

(セッションにおける南雲氏の発表資料より)
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 スマートシティ・インスティテュートと連携して幸せなまちの在り方のKPI化を検討している関氏は、「ポジティブな市民が増えると、行政側もチャレンジがしやすくなり、おそらくイノベーションも進んでいく」と、市民参加につながる指標づくりの重要性を強調した。

 前野氏は、「便利な街」と「幸せ」は、意外と直接的にはつながってこないのではないかと指摘。そこで、「幸せ」の意味をもう少し分解し、「向社会行動」「社会関係資本」「やりがい」といった幸せに寄与する中間的なパラメーターを設定することを提言した。前野教授は「『自ら地域社会のために何かチャレンジすることができる』という幸福度の因子と、『地域にコミュニティセンターがある』ということには、正の相関を持つ可能性が高い」といった例を挙げながら中間因子の必要性を示唆した。

 内田氏は「個人と社会(ミクロとマクロ)の問題が重要になる」と語る。「ある人たちだけは幸せで、別のある人たちはそうではない」といったまちの状況があっても、そのことは「個人としての幸せ」の平均値から読み取ることはできない。内田氏は、指標づくりに際しては「お互いに幸せが伝播するようなマクロ状態とは、どのような状態なのかを考えなくてはいけない」と指摘した。ただし、そうしたマクロな状態の指標が規範となることで、「そうしなくていけない」という形で個人の行動を縛る形になってしまうのもよくないと補足した。

 また、調査に適正な規模について問われた内田氏は、「100世帯くらい集落、いわば『自治会』の規模だと、地域に参加していることが意識されやすい。市町村合併で大きな市になった自治体は、隣接する旧市町村間でコミュニティの性質がまったく異なるケースもある」と指摘。続けて、「(まちの幸せに関する調査は)行政区で単純にくくらずにやや小さい区分で見た方が、そこで暮らしている個人の感覚にはフィットしやすいと思う」(内田氏)とコメントした。

 セッションではそのほか、国際的な指標では市民の宗教や自然環境に対する考え方や、政治参加の度合いも幸福度の要因として含まれること、それらの因子に関する日本と諸外国との受け止め方の違いなどに関する意見も交わされた。