■【Q3】 日本では、水道事業の民間委託により、水道料金が上がるという懸念の声も聞かれる。そもそもパリ市はなぜ「再公営化」(2010年~)したのか? やはり、それまでに民間が自分勝手な大幅値上げなどをしていたのか?

■【A3】 パリ市の水道事業の場合、内外関係者の話を客観的に要約すると再公営化の理由は2つある。

  1. 1985年からの民間委託期間中に料金が2倍以上となり、市民の不満が高まったこと
  2. 長年の民間委託の中で、水道事業に係る市の専門知識・分析能力やモニタリング・ノウハウが失われつつあったこと

である。こうした背景から、政治的決断として再公営化を実施したものと言える。計3者の担い手(民間および3セク。事業者構成はQ2の注1参照)を1つの公社に再編するとともに、料金の8%値下げを実施した。

 ただし、水道料金が2倍以上になっていたのは、民間企業が運営したためだとは言い切れない。パリ市の水道の場合、民間委託期間中の料金値上げは当然、勝手になされたものではない。当初の契約時に合意された計算式(期間中の設備投資や物価変動などを織り込んだもの)に基づいた予定通りの内容であった。同様の設備投資などを行えば、公営であっても当然値上げせざるを得なかった可能性が高い。実際、同時期においては、多くの地域でEUの環境規制への対応強化や更新投資対応から同様の値上げが行われている。

 問題は、行われる設備投資の内容・額やそれに伴う値上げ幅の妥当性を議会や市民などから問われた時、市が適切に説明できない状況になってしまっていたことだ。再公営化は、その状況を改善する第一歩であった。事後の8%値下げは、再公営化の正当性を印象づける「政治的なアピール」の側面が大きく、論理的根拠は少ない。