■【Q4】 パリ市の2010年の「再公営化」から少し時間が経った。現時点でこの成否や他地域へ与えた影響をどう評価すべきか?

■【A4】 「再公営化」した際に、元々3事業体でバラバラだった給与体系を高い水準で合わせたことや、事業者間で互換性のなかった情報処理システムを刷新したことなどにより、30Mユーロ(約37億4000万円)の移転コストがかかった。さらに、その後のコストアップ要因(薬剤費、労務単価など)も出てきているにもかかわらず、再公営化して値下げをアピールしてしまったことで、本来必要な値上げであっても、それをしにくい状況になっている。このため、「必要な投資もできず、相当苦しいはずだ」という見方が多い。今後の長期的な投資計画・料金計画なども現状はまだ検討中の段階である。

 一方、パリ市が説明するような再公営化の理由、つまり、

  1. 気候変動激しい中で、貴重な天然資源である水の政策を公共が主体的に計画し、投資内容も(単純拡張などは少ない中)環境配慮型の持続可能なものを公共主導で考える必要性がある
  2. 公共が主体となり本格的な広域化を考えていく必要性がある
──などについては、説得性が高いとも言える。

 また、パリ市再公営化の前例がきっかけとなり、その後の他地域での民間委託契約更新の際に大幅な値下げが実現したり、また他の自治体も、再公営化を含め最適な事業形態は何かを真剣に考えるようになったりするなど、パリ市の「再公営化」は良い活性化効果ももたらしたと言える。


■【Q5】 フランスでは、「民間委託」と「直営」をどのように使い分けているのか。また、どのように使い分けるべきなのか?

■【A5】 一般的に、近々それなりの大投資が必要になることが予見されている時には、民間委託が選ばれることが多い。民間に長期的計画を立ててもらい値上げを段階的とできる可能性が高いこと(=契約時の計算式により料金はガラス張りで決まる)などからだ。ただし、公共に適切なガバナンスのノウハウがないと、民が過剰な投資を計画したり、計算式が民に有利な形で設計されたり、実質的に「丸投げ」の契約になってしまう可能性もある。

 一方、近々さほど設備投資が必要ない場合や投資をセーブしたい場合、また料金値上げを当面避けたい場合などは、直営が選ばれることが多い。 この場合、投資が本当に必要になるギリギリまで待ってドカンと投資し、その度に値上げするという事態になりがちで、値上げ幅の根拠なども不明瞭になりがちである。公共に長期的な投資プランニング能力があれば良いが、ない場合には、計画性のないその場しのぎの行き当たりばったり的な運営となる。

 重要かつ難しいのは、両者のバランスを適切に見出すことである。