「Beyond Health」2020年3月5日付の記事より

 都道府県「幸福度」ランキングで常にトップレベルにある福井県。その福井県の自然や文化、食を生かし、福井県ならではの「well-beingツーリズム」が企画されている。

 手掛けているのは、「福井県ヘルスケアビジネス研究会」の保健グループ。福井県気候療法士会をはじめ、地元企業など20団体が参加している。同研究会は福井県が設立した「福井しあわせ健康産業協議会」が2019年5月に設置した勉強会で、ヘルスケア産業への県内企業の参入促進を目的としている。

体験会を通じてエビデンスを蓄積

 このwell-beingツーリズムは、気候療法を核とする。気候療法とは、日常生活と異なった気候環境の場所に行き、疾病の治療や休養・保養を行う自然療法の一種とされている。気温や気圧、太陽光など自然の環境因子による刺激を使い、心身に負荷を与えている環境を軽減し、リハビリ効果や健康づくりに生かすものだという。

well-beingツーリズムのイメージ(出所:福井県気候療法士会 半澤清江氏)
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 「福井県は海や山に囲まれている。その地形や気候などの自然を活用し、健やかで幸せな非日常を味わえるwell-beingツーリズムを推進したい」。今回のツーリズムに携わる気候療法士で、福井大学医学部 国際社会医学講座 環境保健学領域 助教の金山ひとみ氏はそう話す。

 金山氏によると、ヨーロッパでは伝統的に気候療法をはじめとする自然療法が各地で盛んに行われ、医学的エビデンスが蓄積されているという。特にドイツには「Kurort」(クアオルト)と呼ばれる気候療法保養地やタラソテラピー保養地などさまざまな区分の保養地が数多くあり、認定を受けて運用されている。それらの保養地の中には、公的保険の補助で利用できるケースもあるという。

 今回のwell-beingツーリズムは、こうしたドイツの保養地で行われる気候療法を参考にした。具体的には、金山氏が所属する福井大学医学部環境保健学教室が開発した、ドイツの気候療法による日本人のための健康プログラムをベースとする。

 既にこの健康プログラムについては幾つかの体験会を実施し、具体的なエビデンスを得たと金山氏は説明する。例えば、福井県越前市の八ツ杉千年の森で行った体験会では、「参加者の気分状態の変化に有意な改善効果が見られた。特に、数回参加した参加者では、片足立ちテストで静的・動的バランス能力の顕著な改善効果があった」(同氏)という。

 福井県あわら市の海岸を歩くプログラムでは、参加者が心拍数や消費カロリーを計測するウエアラブルデバイスを装着して実施した。その結果、「砂浜を歩くことで、傾斜のあるコースと同様の運動負荷を得ることができ、海岸特有の気候による刺激と合わせて鍛錬に役立つことが分かった」(金山氏)とした。