COI事業があと5年続いたら、どんな未来を描けるか

 4人の情報提供に続き、後半のパネルディスカッションでは、有福氏から「COIの社会的な意義や役割」というテーマが出された。田中孝英氏は、COIの意義について「アカデミアで研究されたシーズをいかにして人々の役に立つ価値に変え、それを社会実装していくかが問われている」と回答。吉野氏は、若手の連携や育成に注目し、「自治体や企業の30~40代をつなげられることが、COIの大きな社会的価値ではないか」と答えた。和賀氏もこのような意見に共感しつつ、「若手が元気になる必要があるし、それは大学だけでなく企業や自治体にも求められる」とした。

 中路氏は、COIで企業と組むようになったことで「意識が大きく変わった。弘前大学にとっても青森県にとっても、画期的な変化をもたらしたと感じている」と、自身の体験を踏まえて語った。一方で、COI拠点ではない立場から田中佑治氏は、弘前大学COIの取り組みに触れるなかで「産官学が上手く融合している」という点に驚きと感じたことから、「山梨大学としてはさまざまな教えを請いながら、自身の研究を発展させていきたい」との考えを示した。

 次に有福氏は、これまでのCOIの活動で「何が実現できたのか」と「何が足りなかったのか」を聞いた。中路氏は、「現実的に足りないことばかりだが、プラットフォームのような土台はできたと感じる。その意味で、今後はより多くのデータを集めることが必要」と訴えるとともに、それぞれのCOIがもっと結びつき「互いの足りない点を出し合うことが大切」と付け加えた。吉野氏も中路氏の意見に賛同しつつ、「拠点長同士でお互いの悩みを共有できた」と苦笑。また、これまでは大学間を越えた交流はなかなか難しかったが、「その交流をするためのベースを作れたのではないか」と述べた。

 田中孝英氏は、実現できたこととして「ポストCOIに向けたプラットフォームの形が見えてきた」ことを挙げ、これが「次の人材育成やイノベーションにつながるはず」と期待する。その一方で、「社会実装のスピード感が足りなかった」ことを自身の反省点とした。末永氏は、横断的な組織を構築できたことを挙げ、「とくにCOIは文系の組織が絶対に必要。経済や法律、心理などの先生にも参加してもらい、分野横断的に物事を考える素地ができた」が評価した。ただし、それが「全学的な大きい流れになっていない」ことにも触れ、「まだ時間が必要」と語った。

 最後に有福氏は、視聴者からの「COI事業があと5年続いたら、どんな未来を描けるか」という質問を取り上げ、「新しい枠組みである『COI NEXT』に引き継ぎながら、どんな構想を考えているか」を聞いた。

 田中孝英氏は、「今後上手く回せれば、大学は公的資金がなくても研究を進められるだけのリソースを作れる」との考えから、「そこを目指すべき」と指摘する。立命館大学COIとしては、前出の「エコシステムの構築」によってその実現を目指しており、アカデミアの先生がお金の動きを把握するのではなく「スマートアール推進協議会などが担当すべきだ」との意見を述べた。

 一方で和賀氏は、日常の健康にまつわるさまざまなデータが外国企業によって収集されていることを不安視し、デンマークやエストニア、中国などのように「国中心でヘルスケアデータを集める仕組みを構築すべきではないか」と提案。例えば「大学を中心にデータを保管し、健康になるためのデータ活用を企業と一緒に考えていく」という案とともに、そのためには「大学のあり方として、実現のキーとなる自治体との対話が求められる」と説明した。

 吉野氏は、日本がいまだに達成できていない「少子化へのチャレンジ」を研究目標として挙げるとともに、次世代のためにさまざな教育を行うために「学校をつくる」という構想を示した。中路氏は、可能な限り「PHR(Personal Health Record)」に近いものの実現について言及。その実現には「もちろん、利用者のリテラシーも必要」だが、自分の身体に対するモチベーションが上がることで「健康づくりにも役立つ」と考え、リアルワールドデータのさらなる利活用を進めたい考えだ。

 パネルディスカッションの締めにあたって、末永氏はCOIの活動期間が残り1年余りであることを踏まえ、「後継組織を含めた全国レベルでの連携を行い、日本の強みをさらに打ち出して世界に発信すべき」と指摘。それによって「新しい産業が生まれていく」としてパネルディスカッションを終えた。