内閣府は第1回「地方創生SDGs金融表彰」授与式を3月14日にオンラインで開催した。5つの自治体(横浜市、静岡県御前崎市、鳥取県、鳥取県日南町、長野県」がそれぞれ金融機関などと連携した取り組みが表彰された。応募は全59件あった。

 「地方創生SDGs金融表彰」は、自治体と地域金融機関などが連携し、SDGs(持続可能な開発目標)を原動力として地域における資金の還流と再投資を生み出す地域事業者を支援する取り組みを内閣府特命担当大臣(地方創生)が表彰する制度だ。内閣府が2021年度に創設、今回が初実施となる。2021年11月末から22年1下旬まで募集し、書面選考とヒアリング選考を経て5件の取り組みの表彰を決定した。

団体名 概要
代表地方公共団体等 代表地域金融機関等 協働応募団体
神奈川県横浜市 ヨコハマSDGsデザインセンター 神奈川銀行
かながわ信用金庫
川崎信用金庫
三井住友銀行
三菱UFJ銀行
横浜銀行
横浜市信用保証協会
横浜信用金庫
公益財団法人横浜企業経営支援財団
三井住友ファイナンス&リース
三井住友海上火災保険
横浜市SDGs認証制度“Y-SDGs”及びY-SDGs金融タスクフォースの運用を通じた自律的好循環の形成
静岡県御前崎市 島田掛川信用金庫 静岡県牧之原市
静岡県藤枝市
静岡県榛原郡川根本町
静岡県榛原郡吉田町
地元企業と学生を行政と金融機関が繋ぐ「Uターン・地元就職応援プロジェクト」
鳥取県 山陰合同銀行 鳥取銀行 「知る」から「パートナーシップ」まで:リトルで利取る鳥取県版SDGsパッケージ支援
鳥取県日南町 山陰合同銀行 SDGs・脱炭素で地域事業者のサステイナブル経営を後押しするSDGs未来都市の挑戦
長野県 上田信用金庫 事業者に「気づき」を与え、共に持続可能な地域社会を目指す融資商品 「SDGs/ESGサポートローン」
受賞した5つの取り組みと団体(出所:内閣府地方創生推進事務局)

 以下、受賞した5つの取り組みの概要を紹介する(代表地方公共団体名50音順)。

神奈川県横浜市/ヨコハマSDGsデザインセンター

■横浜市SDGs認証制度“Y-SDGs”及びY-SDGs金融タスクフォースの運用を通じた自律的好循環の形成

 横浜市とヨコハマSDGsデザインセンター(以下、センター)は「横浜市SDGs認証制度 “Y-SDGs“」を20年8月にスタートさせた。センターは事業者と連携しながらSDGsの達成に向けて横浜における環境・経済・社会的課題の解決に取り組む中間支援組織だ。センターの会員になると様々な情報発信、会員同士のマッチングやセンターによるコンサルティングなど多様な支援を受けることができる。

 「横浜市SDGs認証制度 “Y-SDGs“」は、環境・社会・ガバナンス・地域貢献の4分野において30のチェック項目を設定し、センターの評価員が対象企業・団体を評価。それを受けて市が最上位「スプリーム」・上位「スーペリア」・標準「スタンダード」の3段階で認証する。

(出所:横浜市/ヨコハマSDGsデザインセンター)
(出所:横浜市/ヨコハマSDGsデザインセンター)
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 認証された事業者には、認証マークの利用、PR支援、「横浜市総合評価落札方式」の評価項目として加点対象となること、中小企業融資制度において信用保証料助成のある「よこはまプラス資金」の対象となることなどのメリットがある。

 事業者からは、認証取得により「社外からSDGsに積極的に取り組んでいる企業として認知された」「取引先からの信用度が増した」といった声が寄せられているという。認証取得事業者数は21年12月時点で305。内訳は「スプリーム」13事業者、「スーペリア」84事業者、「スタンダード」208事業者である。

 並行して、市センターが事務局となり、地域金融機関を中心にY-SDGs金融タスクフォースを21年7月に設立した。ここでは認証制度を活用した市内事業者へのSDGs普及などの活動に取り組んでいる。

 そのほか、評価された取り組みの1つに「寄付つきリース商品との連携」がある。21年6月、三井住友ファイナンス&リースは横浜市と連携協定を締結し、寄付つきリース「SDGsリース『みらい2030』(寄付型)」とY-SDGsの連携を発表。Y-SDGsを認証取得した非営利団体に対し、21年度に横浜市で契約したリース契約定数料の一部を寄付した。21年12月時点で寄付予定額はリース料総額の0.1%・125万円となっている。

 こうした両者による取り組みは、受賞講評では「持続可能なまちづくりに向けて、他の地方公共団体、地域金融機関のモデルとなる」と評価された。

静岡県御前崎市/島田掛川信用金庫

■地元企業と学生を行政と金融機関がつなぐ「Uターン・地元就職応援プロジェクト」

 御前崎市には人口減少、産業の衰退による税収の減少といった課題がある。一方、島田掛川信用金庫には取引先の人手不足による生産性の低下、担い手不足による廃業の増加といった課題があった。そこで両者が手を組んでスタートさせたのが「リターン就職応援プロジェクト」だ。県内外に進学する学生に御前崎市の魅力を発信し、将来地元で活躍する若者を増やすことが目的だ。

(出所:御前崎市/島田掛川信用金庫)
(出所:御前崎市/島田掛川信用金庫)
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 プロジェクトでは、地元の高校3年生に登録してもらい、合同企業ガイダンスの開催、インターンシップ情報の提供などの情報発信を行い地元企業を支援するほか、助成金とローンの優遇を行う。

 「リターン就職応援助成金」では、「リターン就職応援ローン」(後述)を借り入れ、卒業後に御前崎市内に在住し、市および近隣市の企業に就職した学生の保護者に対して、借入利息相当額(最大2.0%)を助前金として支給する。また、同一企業に5年間就職した場合は、借入元金の20%を助成金として支給するというものだ。

 「リターン就職応援ローン」は、プロジェクトに参加した学生の保護者に対して、地元金融機関(島田掛川信用金庫、静岡銀行、静岡県労働金庫)が通常より低利率の2.0%でローンを提供するという内容だ。

 受賞講評では「金利優遇や元金一部を助成金として支給するユニークな支援スキーム」であり、「地域経済の存続に関わる課題に対して、地方公共団体と地域金融機関が連携して取り組んでいる稀有な事例」と評価された。

鳥取県/山陰合同銀行

■「知る」から「パートナーシップ」まで:リトルで利取る鳥取県版SDGsパッケージ支援

 鳥取県は、県全体のSDGs達成に向けた県民運動を起こしていくため、県が官民連携ネットワークを設置し、山陰合同銀行と鳥取銀行の2行と協働を進めている。これにより、地域経済の自律的好循環の形成を目指す。

(出所:鳥取県/山陰合同銀行)
(出所:鳥取県/山陰合同銀行)
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 この官民協働では、以下の3段階のパッケージ支援を行っている。

ステップ1:「知る」支援
 県内のSDGsに取り組む企業・団体などに登録してもらう宣言・登録制度「とっとりSDGsパートナー制度」を設置。さらに「とっとりSDGs伝道師制度」を創設して、企業の依頼により社内研修などで“伝道師”がSDGsの理念を分かりやすく説明する仕組みを整えた。

ステップ2:「実践」支援
 「とっとりSDGs企業認証制度」により、認証を受けた企業に対して.SDGs経営伴走サポートやFS調査や試作開発の支援などを行う。

ステップ3:「パートナーシップ」支援
 表彰やマッチングを行い、新事業の創出や拡大を進める。

 こうした官民協働体制やパッケージ支援により、受賞講評では「域外からビジネスの獲得や関係人口の創出が期待できる」と評価されている。

鳥取県日南町/山陰合同銀行

■SDGs・脱炭素で地域事業者のサステナブル経営を後押しするSDGs未来都市の挑戦

 山陰合同銀行は鳥取県日南町とのプロジェクトでも受賞した。日南町は人口約4200人、高齢化率は52%に達し、少子高齢化が進行する「日本の30年後の姿」の町として多くの学術機関におけるモデル地域にもなっている。

 町の産業は農業や林業の第一次産業が中心だ。そこでFSC(森林管理協議会)認証された町有林から創出されるJ-クレジットを活用したカーボン・オフセットの促進に取り組んでいる。J-クレジットとは、適切な森林管理などによる温室効果ガスの吸収量や削減量を「クレジット」として国が認証する制度。クレジットを購入することで温室効果ガスの削減を行ったとみなされる(オフセットされる)。

 日南町はJ-クレジットの販売支援を行う「地域コーディネーター制度」を導入した。地域にネットワークを持つ金融機関が地域コーディネーターとしてJ-クレジットを販売する。その売り上げを林業の振興と生態系の保全に活用し、持続可能な森林づくりに生かす。地域に資金が還流し、実効性ある森林への再投資を実現するための「基金」もつくった。21年のJ-クレジット販売実績は79件、二酸化炭素換算で1446トンと、過去最高だった20年度の24件・658トンから急増した。

(出所:日南町/山陰合同銀行)
(出所:日南町/山陰合同銀行)
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 受賞講評では「地球温暖化対策(環境)だけでなく、植林による雇用創出(社会)、そしてクレジット売却益(経済)と、三側面を統合的に取り組んでいる点」が高く評価され、全国のモデル事例となることが期待されている。

長野県/上田信用金庫

■事業者に「気づき」を与え、共に持続可能な地域社会を目指す融資商品「SDGs/ESGサポートローン」

 長野県と上田信用金庫は「長野県SDGs推進企業登録制度」を2019年に全国に先駆けて創設した。登録企業はSDGs達成に向けた「宣言」と取り組みのセルフチェックが必要になる。現在、登録者数は1300を超える。

(出所:長野県/上田信用金庫)
(出所:長野県/上田信用金庫)
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 同登録制度を創設する前、長野県内企業のSDGs認知度は13%と低かった。他の地方と同様、人口減少や地域経済の停滞という課題を抱えていた。そこで上田信用金庫を含む地域金融機関・大学・経済界による「NAGANO×KANTO地域SDGsコンソーシアム」を経済産業省関東経済産業局の協力の下で組織し、登録制度を検討・創設した。

 また、SDGsに資する事業を進めるには新たな資金が必要となることから、「SDGs/ESGサポートローン」を創設。登録制度に登録した企業もしくは上田信用金庫独自のチェックリストで認定された企業は同サポートローンを利用できるようにした。利用にあたり、同金庫とSDGsに取り組んでいくことを表明しなければならない。

 チェックリストは事業者と同金庫職員で協働して作成し、事業性評価も実施するため、伴走型支援によりSDGs達成に向けて具体的なアクションにつなげることができる。サポートローンは21年12 月末時点で24社が利用し、融資実行金額は10億円以上になる。第1号案件は小水力発電事業を計画している佐久穂水力発電だ。そのほか、営農型太陽光発電設備などのエネルギー関連、幼稚園や外国人技能実習生向け研修センターの建設資金など幅広い分野で活用されている。

 受賞講評では「地域事業者へきめ細かい伴走型支援を行っている『地方創生SDGs金融』のモデル事例であり、他の地域においても展開が可能な取り組みである」と評価された。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/report/032200313/