「Beyond Health」2020年3月18日付の記事より

 地域の元気高齢者がリーダーとなり、ICTを活用しながらコミュニティーを築く――。介護予防に向けた、そんな取り組みが始まろうとしている。その名は「老いて豊かなキズナ型クラブ」だ。

ICT活用で一人も取り残されない仕組みを

 提案しているのは、「福井県ヘルスケアビジネス研究会」の介護グループ。同グループに所属する理学療法士で、スタジオユウ 代表取締役の福田裕子氏はこう話す。

 「従来の介護予防事業では、『同じ人ばかり参加している』『男性が参加していない』という課題があった。豊かな人のつながりを育み、男女ともに高齢者自身がサービス提供者となり、生き生きと地域の活動に参加する介護予防ビジネスを実現していきたい」。

介護グループを代表して2020年2月7日に福井市内で開催された「福井県ヘルスケアビジネス研究会 プラン発表会」で取り組みについて発表したスタジオユウの福田氏(写真:Beyond Healthが撮影、以下同)
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 老いて豊かなキズナ型クラブには、次の5つの機能を備える。すなわち、(1)食・宿泊・癒し体験・運動など大人の遠足・部活を通してキズナを構築する「グルーピング」機能、(2)県外客をもてなすボランティア活動などによる「利他互恵」機能、(3)イベントやセミナー運営などに積極的に参加して自らを律する「衆人環視」機能、(4)過去の職歴などを生かした「役割・責任」機能、(5)SNSなどのメディアが生み出す「体験共有」機能、である。

 こうした取り組みのベースとなるのが、「高齢者オンラインサロン」だ。コミュニティーの連絡、交流、活動の公開などにICTツールを活用したオンラインによるサロンである。

 「高齢者がオンラインで動画やテキストなどの教材を用いて予習し、実習の場であるリアルなイベントなどで予習したことを生かして活動したり、わからないことを解決したりする反転学習の仕組みを取り入れていく。ICTを活用することで、一人も取り残されない仕組みの構築を目指したい」(福田氏)。

 今後、こうしたICTツールやネットワーク基盤の要件定義、構築を1年間かけて行い、2021年春以降に鯖江・美山・大野地区などで実証運用を始める予定である。「私たちの作り上げたモデルを、福井県モデルとして実運用につなげたい」(福田氏)。

研修を受けた地域の高齢者が「フレイルサポーター」に

 今回の取り組みの発想の原点は、経済産業省 地域版次世代ヘルスケア産業協議会による次世代ケアの実現に向けた提言だという。すなわち、従来の医療・介護事業はサービスの供給側から受け手側へ一方向で提供されていたが、今後は誰もが支え手になり、共に助け合う「ネットワーク型」へ変革していく――というものだ。

 その具体例として取り組みの参考にしたのが、福井県が東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)との共同研究で始めたフレイル予防事業である。フレイルに関する1日間の研修を受けた地域の高齢者が、「フレイルサポーター」となって地元の仲間たちのフレイルチェックを行い、地域活動の中でフレイルの予防に取り組む事業だ。

今回の取り組みの発表に際して投影されたスライド
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 こうした例を基にしながら、サービスの受け手だった高齢者が、サービス提供側となるモデルを構築することを狙う。「元気な高齢者がリーダーとなって地元地域の健康づくりに取り組むコミュニティーを目指す。『大人の遠足』や『大人の部活』といったイベント実施を通じて企業や行政、大学などとコラボレーションしながら収益事業につなげていきたい」(福田氏)。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/report/032300230/