まちづくり分野において、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)はどのように活用できるのか。国土交通省は2021年3月4日、「まちづくり×SIB」シンポジウムをオンライン開催した。国土交通省の担当者、まちづくり分野へのSIB導入についてのモデル事業を進めている前橋市の担当者をはじめ、SIBの第三者評価にかかわる千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門教授の近藤克則氏、資金提供や中間支援を行う一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)の青柳光昌専務理事、公共経営・社会戦略研究所代表取締役社長で明治大学経営学部教授の塚本 一郎氏らが登壇し、講演やディスカッションが行われた。シンポジウムを通じて見えてきた「まちづくり×SIB」の現況や今後についてリポートする。

世界でもまだ例の少ないまちづくり分野のSIB

 英国で始まり、アメリカやオーストラリアが先行するSIBだが「対象とする事業の領域は主に社会福祉、次いで就労支援、保健医療、教育や再犯防止などで、まちづくりと呼べるようなSIB事業は世界的にも例が少ない」と国内外のSIBを調査研究する公共経営・社会戦略研究所代表取締役社長の塚本 一郎氏は言う。

 日本では2017年度に八王子市と神戸市が保健分野で初のSIB事業を実施した。「SIIFはその導入支援のために設立された財団だ」と青柳氏。現在国内では、約30件ほどのSIBが実現しているという。一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)専務理事の青柳光昌氏は「日本のSIBは、黎明期を終え、いよいよ本格的な導入期に入っている」との認識を語った。

公共経営・社会戦略研究所代表取締役社長の塚本一郎氏(シンポジウム配信画面より)
一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)専務理事の青柳光昌氏(シンポジウム配信画面より)

 国土交通省では、2018年度にまちづくり分野におけるSIB導入に向けた基礎調査に着手、2019年度に実証事業を行い、地方公共団体向けにSIB導入の手引きをまとめた。2020年度には、先行モデルとなる地方公共団体を公募し、前橋市を採択。現在、有限責任監査法人トーマツが同市に対してSIB事業の導入を支援し、案件組成に向けた検討を進めているところだ。

国土交通省のまちづくりSIBの検討経緯(有限責任監査法人トーマツの当日発表資料「事業成果報告」より)
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9月開始を目指す「前橋市アーバンデザインモデルプロジェクト」

 前橋市は、2019年に民間主体のまちづくりを推進するための長期計画「前橋市アーバンデザイン」を官民連携で策定した。SIB事業はその一環として2021年9月から1年半かけて行う計画だ。中心市街地を対象に、遊休不動産や道路、水辺空間の活用を進め、失われた賑わいを取り戻すというものだ。

 前橋市都市計画部市街地整備課副主幹の濱地淳史氏によると、目下の課題は、事業内容と成果指標、成果指標と支払い金額の相関が必ずしも明確になっていないことだという。「事業としてはまちづくり勉強会やワークショップを考えており、成果指標には来街者数を掲げている。しかし、来街者数の変動要因は多数考えられるため、これから整理する必要がある。また、来街者の増加数に対していくら支払うのが適切なのか、根拠の説明が難しい」(濱地氏)。

「前橋市アーバンデザインモデルプロジェクト」によるまちのイメージ(前橋市の当日発表資料「モデル事業担当者のSIBスキーム導入に対する考え」より)
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