長野県東御市のスポーツ施設を分析

 私たちは、長野県東御市の協力を得て、スポーツ施設の整備・運営を対象として地域付加価値創造分析を行いました(横田ら、2020)。論文でまとめた内容について、あらためて整理すると以下のようになります。

 長野県東御市は、湯の丸高原に高地トレーニング拠点「GMOアスリーツパーク湯の丸」を整備し、スポーツツーリズムを推進しています。GMOアスリーツパーク湯の丸は、標高1,735mの高地に日本唯一の高地トレーニング用屋内プール、国内最高地点の全天候型400mトラックがあり、スポーツ合宿者向けの宿泊施設やアスリートに食事を提供するレストランがエリア内に整備されています。また、高地にありながら、東京から3時間とアクセスも良く、競泳や陸上の多くのトップアスリートが合宿を行っています。東京オリンピック・パラリンピックの直前には、大橋悠依選手(200m個人メドレー・400m個人メドレー金メダル)や木村敬一選手(100mバタフライS11金メダル)もここで合宿を行いました。

GMOアスリーツパーク湯の丸(出所:東御市提供)
GMOアスリーツパーク湯の丸(出所:東御市提供)
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東御市(とうみし)
東御市(とうみし)
長野県の東部に位置し、北は浅間連山を背に、南は蓼科、八ヶ岳連峰の山なみを望む。2万9640人(2022年3月1日現在)、面積112.37km2。くるみ(シナノグルミ)、巨峰などの産地として知られる。市北部にかかる上信越高原国立公園の「湯の丸高原」は高山植物が豊富でフラワートレッキングが楽しめる。

 私たちの研究では、調査時点(2019年11月)で稼働しているエリア内のすべての施設を対象に分析を行いました。具体的には、市から事業者に発注された各施設の整備(測量,設計、施工監理、施工)に関する9事業、各施設の運営に関する3事業及び民間事業であるアスリート食堂の合計13事業です。

 分析は、直近1年間の運営実績が同水準で継続することを前提として、2028年までの概ね10年間の運営を想定して行いました。その結果、13事業から生じる経済付加価値は、約14億1000万円と推計されました。また、この14億1000万円のうち、市内で発生する経済付加価値は約5億円、市外で発生する経済付加価値は約9億円。65%近くが地域外であることも分かりました。

 施設別にみると、事業規模の大きいプールから生じた経済付加価値が最も大きくなっています(約6.8億円)。ところが、市内で発生した経済付加価値に目を向けると、高原荘とアスリート食堂がいずれも2億円弱であるのに対して、プールは約0.7億円にとどまっています。

(出所:横田ら、2020)
(出所:横田ら、2020)
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 なぜ、このようなことが起るのでしょうか?理由は簡単です。プールは、設計や施工、運営を市外の企業が受託しています。また、施工については、下請企業も多くが市外の企業でした。一方、高原荘やアスリート食堂は、市内の企業が事業主体として多くの業務を担っています。このことから、経済付加価値全体は事業規模に応じて大きくなるものの、地域内の企業や従業員の関与が少ない場合は、経済付加価値の多くが地域外で発生するため、地域経済への貢献は限定的であることが分かりました。

 また、整備時と運営時に分けてみると地域内経済付加価値の9割以上は運営時に生じていることも分かりました。運営時に地元企業への発注が増えるのは感覚としては理解できると思いますが、こうして数字で現れると、施設運営時の地域経済への影響の大きさを再認識できるでしょう。

(出所:横田ら、2020)
(出所:横田ら、2020)
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