介護費の削減効果を早期に評価する尺度を開発

 厚生労働省の統計によると、介護給付の受給者の1人当たり費用額は約15万7000円/月で推移してきた。近藤氏はこれを基に「介護サービス利用者が1000人減ると、年間で18億8000万円の費用を削減できる」と試算。「民間企業のまちづくり事業で介護サービス利用者を1000人減らせたら、行政はその企業に数億円を支払っても財政がよくなる。報酬が支払われれば事業はますます充実し、住民の健康増進や幸福感につながり、要介護認定率はさらに低下し……と好循環が生まれるはずだ」とSIB適用の意義を語った。

 近藤氏ら千葉大学予防医学センターは、竹中工務店と共同で、歩きやすい町や使われやすい階段といった既往のエビデンスを整理し、空間設計・まちづくりに活用できる「健築デザインガイドライン」の策定を目指すなど、企業や自治体との共同研究・開発に取り組んでいる。

 また、近藤氏が代表理事を務めるJAGESでは、「全国版 要支援・要介護リスク評価尺度」を開発した。高齢者が10問のアンケートに回答し、その得点に年齢・性別による点数を加えて「合計リスク点数」を算出するというもの。リスク点数と介護費用の相関関係も合わせて研究しており「リスク評価点数が1点上昇すれば介護費は約1万9300円増える」という。この評価尺度を確立することで、「実際の要介護認定率で評価する場合には3年かかるところを、アンケート回答で早期に介護費の削減効果を見積もることができる」。行政コストの削減効果を早期に測れるようにし、SIB組成のハードルを下げる狙いだ。

日本老年学的評価研究機構(JAGES)が開発した要支援・要介護リスク評価尺度(近藤教授の講演資料より)
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リスク点数と介護費用との相関を示すグラフ。この評価尺度が確立・普及すれば、SIBにおける介護費削減の効果測定は早期に行えるようになる(近藤教授の講演資料より)
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 近藤氏は「(食べたいものを食べることなどを)ガマンして健康になるよりも、(スポーツや地域活動などで)楽しんで健康になる。そんな社会づくりに貢献したい」と話して、講演を締めくくった。