国土交通省は、まちづくり分野へのソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)導入の意義や可能性を考える「まちづくり×SIB」シンポジウムを2019年3月7日に開催。シンポジウム後半には、SIBに取り組む自治体や、SIBの組成を支援する企業、大学、国土交通省から関係者が集まり、パネル・ディスカッションを行った。参加者の発言要旨を以下にまとめる。

パネル・ディスカッションの様子(写真:赤坂麻実)
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東近江市では市民の投資で空き店舗を拠点に

東近江三方よし基金の事務局員を務める山口美知子氏。基金事務局は東近江市市民環境部森と水政策課が運営しており、山口氏は同課の職員だ(写真:赤坂麻実)

 「東近江市版SIB事業」に取り組む滋賀県東近江市からは、市職員の山口美知子氏が登壇し、活動内容やSIBのメリットを語った。東近江市版SIBは、行政が成果連動型補助金の適用事業を募集し、採択された民間の事業を市民の投資で支援する仕組み。同市では、2017年に市民772人からの寄付で「東近江三方よし基金」が発足。2018年に公益財団法人となった。同基金の事務局員を兼任する山口氏は「自然や人、社会、人工物(インフラ、建築物など)、文化などバラバラに存在する地域資源を“お金でつなぐ”仕組みが求められていた」と説明する。

 これまでに東近江市版SIBで実現してきたのは、空き店舗を改修して地域の拠点とした「がもう夢工房」など。カフェを開設すると共に、同敷地内で地元産の野菜・果物を販売するマルシェを定期開催している。近隣の新興住宅地へ新鮮な野菜を届けようとの企画趣旨の通り、近隣から歩いて訪れる利用者が多いという。また、空き家を活用した「地球ハートヴィレッジ」では親子参加型のアート制作イベントなどを実施。同じく空き家を使った「ぐるりの家」では産前産後の親子をサポートしている。

東近江三方よし基金の事例集(山口氏の講演資料より)

 山口氏は「どのプロジェクトもミッションはソフト(コンテンツ)にあり、ミッション達成のための重要な要素としてハード(施設、建物)がある。まちづくり分野へのSIB適用を考えるのは意義あること」と話した。また、企業単位ではなく市民一人ひとりが投資する東近江市版SIBのメリットについて、次のように語った。「地域の皆さんがお金を出し合っているので、出資者も事業の当事者のように活動に加わって、プロジェクトの強力な“応援団”になる。また、福祉や環境といった分野で区切らず、“街をよくしたい”という大きなテーマで活動している分、様々な人が垣根なく集まることができ、地域のみんなで盛り上げていける」。