成果指標の適切な設定が重要

厚生労働省 社会保障担当参事官室 制作企画官 日野力氏(写真:近藤寿成)

 次に登壇したのは厚生労働省 社会保障担当参事官室 制作企画官の日野力氏。日野氏によれば、厚生労働省は2017年度から「保険福祉分野における民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業」の1つという位置付けでSIB事業を推進している。保健福祉分野でSIBのスキームを使って試行的に社会的事業を進め、これを通じて「社会的事業における成果測定のための指標設定」「成果に基づく報酬設定」「行政や民間事業者との契約締結のための環境整備」を行うことを目的とする。

 現在、事業のカテゴリーは、該当課題を有する個人に対して支援・介入する「特定課題型事業」と、個人だけでなく地域に対しても支援・介入する「地域課題型事業」がある。委託費の支払い方法は最低保証分(400万円以内)と成果連動分(500万円以内)の2つに分かれており、支払いの上限は合計900万円以内だ。

 900万円以内と設定した支払いの上限について日野氏は「実際の事業として進める場合にはもっと事業規模を大きくしないと成功しない可能性もある」との見解を示した。

 2017年度には特定課題型で3事業、地域課題型で2事業の計画がスタートし、2018年度は2017年度分も含めて特定課題型で6事業、地域課題型で4事業が進められている。2019年度については、特定課題型事業では成果指標と成果に応じた報酬設定の手法を見出し、その後の事業の実施につなげていく。地域課題型事業では、民間資金の調達方法とそれが容易になる成果指標を検討していく。

 SIBにはまだまだ課題もある。日野氏は、「スキームをもう少しシンプルな仕組みに変える必要がある」「モニタリングに必要なコストが大きい」ことなどを課題として挙げ、「成果指標と報酬を上手くマッチングさせることが必要だ」と語った。さらに、成果指標のバラツキや金銭評価できないコストなどの問題も指摘した。

 さらに日野氏は、成果指標を適切に設定することの重要性にも触れた。というのも、現況では「健康寿命を延伸しても、生涯医療費が下がるとは言い切れないし、下がらないとも言い切れない」(日野氏)からだ。ゆえに、このままSIB事業が普及していったときに、成果について議論が巻き起こる懸念を表明した。

 とはいえ、「うまく進めることができれば、SIB事業は自治体の既存事業を変えるきっかけになる」(日野氏)。厚生労働省としても「まずは2019年度の事業をきっちり進め、その後の展開を考えていく」と語った。

厚労省の環境整備事業および評価・運営事業のスキーム図(当日の講演資料より)
[画像のクリックで拡大表示]