国土交通省都市局街路交通施設課は、自治体による先進的な道路空間づくりのプロジェクトなどを紹介する講演会「第3回マチミチ会議」を2021年3月4日に開催した。オンライン開催となった今回会議には500人を超える参加申し込みがあったという。当日のプログラムより横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院の野原卓准教授による基調講演の概要をリポートする。

 基調講演に登壇した横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院の野原卓准教授(UDCイニシアティブ理事)は、自身が携わった各地の取り組みを交えながら、ストリート(道路と沿道〔民地・建物〕合わせた空間)で大切にするべき「5つの視点」を紹介した。

横浜国立大学大学院の野原卓准教授が基調講演を行った(配信中の画面をマチミチ会議事務局がキャプチャ)
横浜国立大学大学院の野原卓准教授が基調講演を行った(配信中の画面をマチミチ会議事務局がキャプチャ)
街路空間(ストリート)で大切にするべき5つの視点(野原准教授の講演資料より)
街路空間(ストリート)で大切にするべき5つの視点(野原准教授の講演資料より)
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20~30年スパンの見直しで発展した横浜・元町商店街

 視点の1つめは、整備、管理、利活用の3要素から成るサイクルを回して、空間の価値を高めていく視点だ。

整備、管理、利活用のサイクルを回していくイメージ(野原准教授の講演資料より)
整備、管理、利活用のサイクルを回していくイメージ(野原准教授の講演資料より)
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 野原准教授は、例として横浜の元町商店街の発展を挙げた。同商店街には70年の歴史がある。戦後は米軍に接収されていた時代もあり、道路が自動車で埋め尽くされた時期もあったが、20~30年に1回、道路の在り方を見直し、発展してきた。

 1950年代には、道路幅が狭いなかで多くの自動車が走り、商店街として機能しない状況を改善することになった。沿道の店舗が1階部分を1.8m後退させて、道路と一体的な民地の空間を生み出した。1980年代になると、車道を一方通行にして電線も埋設し、歩道を拡幅。植栽のある休憩空間や駐車帯を設け、歩車共存の「ボンネルフ」に仕立てた。2004年には民間の店舗の敷地と、歩道・車道の舗装を一体的なデザインに。そして2020年からはパークレット事業(車道の一部を歩行者の利用空間にする取り組み)が始まった。

 「計画を立てて整備し、整備が終わればまた資金を積み立てながら、整備した空間を活用し、活用した経験を踏まえて新たな計画を練る――。元町商店街では、このサイクルを繰り返しながら道路空間を更新してきた。2017年と2019年には道路を舞台にミュージカル公演を行った。2020年には駐車メーターがあった場所を何カ所か、ベンチ空間につくり替えているが、これも『ストリートミュージカル』で座る場所が少ないという課題が見つかったことと関係している。単に整備して終わりではなく、利活用しながらニーズを捉えることが大切だ」(野原准教授)