国土交通省都市局街路交通施設課は、自治体による先進的な街路づくりのプロジェクトなどを紹介する講演会「第3回マチミチ会議」を2021年3月4日にオンライン開催した。会議では横浜市と岡山市がそれぞれ講演し、各市の道路空間の再整備や利活用の取り組みを語った。その概要をリポートする。

【自治体発表・横浜市】みなと大通りなどで車線幅を狭めて歩道を広げる

講演する横浜市都市整備局企画部都市デザイン室の梶山祐実室長(配信画面をマチミチ会議事務局がキャプチャー)
講演する横浜市都市整備局企画部都市デザイン室の梶山祐実室長(配信画面をマチミチ会議事務局がキャプチャー)

 横浜市都市整備局企画部都市デザイン室の梶山祐実室長は、関内駅周辺で進む2つの道路空間の再整備・利活用プロジェクトを紹介した。「みなと大通りおよび横浜文化体育館周辺道路」と、「日本大通り」だ。JR関内駅周辺を中心とするこのエリアでは、2020年6月に市庁舎が馬車道駅前に移転したのを機に、旧市庁舎街区の活用を含めた新たな街づくりが進んでいる。

 JR関内駅の南側と海岸を一直線で結ぶみなと大通りは片側2車線の道路を、片側1車線にして歩道を拡幅し、自転車レーンも設ける方向で検討を進めている。一方の横浜文化体育館周辺道路は、片側1車線ながら幅員が5.5mほどと広いが、車線幅を3m程度に狭め、歩道を広げて自転車レーンも設置することを検討している。

みなと大通りおよび横浜文化体育館周辺道路の周辺では再開発が盛んだ。旧市庁舎街区ではホテルやアリーナ、オフィス、大学など多機能を集積する複合ビルが2025年下期に開業予定(梶山室長の講演資料より)
みなと大通りおよび横浜文化体育館周辺道路の周辺では再開発が盛んだ。旧市庁舎街区ではホテルやアリーナ、オフィス、大学など多機能を集積する複合ビルが2025年下期に開業予定(梶山室長の講演資料より)
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 2020年11月には、みなと大通りおよび横浜文化体育館周辺道路で社会実験を実施。カラーコーンを設置して車線幅を狭めて歩道を広げ、人や車の流れや沿道の利活用について検証した。併せて、利活用を促進するため、デッキの設置位置や使い方の例などを示した地図(リーフレット)を作成・配布。さらに、旧市庁舎の仮囲いに再整備事業の概要を掲示したり、カーゴバイクで通りを回ってアンケートを実施したりした。民間からも「面白がる会」というワークショップが発足したり、沿道の飲食店がデッキにいすを置くといった協力が生まれたりしたという。

官民でストリートの利活用促進に取り組んだ(梶山室長の講演資料より)
官民でストリートの利活用促進に取り組んだ(梶山室長の講演資料より)
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 「コンビニや飲食店の前にはテイクアウトしてイートインできるようにいすやテーブルを置き、開港記念会館の前には畳敷きの和室風の空間を設けるなど、場所に合わせて利活用空間を用意した。テーブルにノートパソコンを置いて仕事をする人がいたり、和室風デッキでお茶を点てたり、芝生敷きのデッキで子どもたちが遊んだりと、多様な利活用シーンが見られた」(梶山室長)

 期間中に通りで実施したアンケートでは、約400人の回答者の8割が、社会実験を「良い」と評価していた。今後は基本設計を修正した後、2021年度に詳細設計を実施し、2022年度から2023年度にかけて再整備工事を行う予定。沿道の大型開発を手掛ける事業者らとも、利活用について引き続き協議・検討していくとした。

日本大通りでは民間イベント開催についてガイドラインを策定

 みなと大通りと並行して走る日本大通りは、2002年にハード面の再整備を完了。再整備前は片側が10メートルほどの広幅員道路であったのを、再整備で車線幅を狭めて歩道を拡幅した。また、歴史的建造物が建ち並ぶ通りの景観を守るため、沿道の建物には壁面後退の規制を設けた。

日本大通りは、スコットランド出身の土木技術者であるリチャード・ブラントンが設計した日本初の西洋式道路。広幅員で、沿道には重要な公共施設を集積した(梶山室長の講演資料より)
日本大通りは、スコットランド出身の土木技術者であるリチャード・ブラントンが設計した日本初の西洋式道路。広幅員で、沿道には重要な公共施設を集積した(梶山室長の講演資料より)
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 再整備工事が完了した2002年は、サッカーのワールドカップ開催期間に合わせて、期間限定でオープンカフェを実施。その後、2005年にオープンカフェの常設に向けた社会実験を行い、2006年には沿道事業者有志で「日本大通り活性化委員会」を設立。本格的にオープンカフェが設けられた。活性化委員会と横浜市都市デザイン室が協定を結び、活性化委員会が道路占用許可を取り、デザイン室が道路管理者や交通管理者との調整を担って、オープンカフェを実現した。また、横浜港開港150周年に当たる2009年には大規模なイベントで注目を浴びた。

日本大通り活用の実施体制(梶山室長の講演資料より)
日本大通り活用の実施体制(梶山室長の講演資料より)
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 「近年では市の他部署からも民間からも、道路空間を活用したいというニーズが高まってきた。そこで、民間の主体でも市の了承を得て道路を使ったイベントが開ける仕組みを構築した。6カ月前までをめどに、イベント企画者が(中区の)区役所に企画書を提出すれば、区が地域に資するイベントかどうかを審査のうえ、後援する仕組みになっている。道路空間の活用に当たって連絡調整すべき関係団体やルールなどをまとめたガイドラインも区が作成・公開している。今後は、「歩行者利便増進道路(ほこみち)」といった新制度の創設など状況の変化を受けて、地元組織の体制も再構築しようという検討が進んでいる」(梶山室長)

【自治体発表・岡山市】岡山県庁通り、ウォーカブルで緑豊かな空間に

講演する岡山市都市整備局都市・交通部庭園都市推進課街なかにぎわい推進室の舌﨑博勝技師(配信画面をマチミチ会議事務局がキャプチャー)
講演する岡山市都市整備局都市・交通部庭園都市推進課街なかにぎわい推進室の舌﨑博勝技師(配信画面をマチミチ会議事務局がキャプチャー)

 岡山市都市整備局都市・交通部庭園都市推進課街なかにぎわい推進室の舌﨑博勝技師は、岡山市の中心市街地を東西に横切る県庁通りの取り組みを紹介した。岡山市では、JR岡山駅前と、岡山後楽園などがある歴史文化遺産が集積するエリアがにぎわいの核であり、県庁通りはこの2つの核を結んでいる。

 道路空間の再整備は2019年に着工しており、2022年度中に完成予定だ。全幅員15mはそのままに、幅員3.25mの2車線(一方通行)だったのを幅員3mの1車線に変更。歩道を拡幅し、自転車レーンを設ける。

岡山駅前では2014年にイオンモール岡山が開業。そのにぎわいを中心市街地全体に波及させることが課題になっている(舌﨑技師の講演資料より)
岡山駅前では2014年にイオンモール岡山が開業。そのにぎわいを中心市街地全体に波及させることが課題になっている(舌﨑技師の講演資料より)
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 従来よりも植栽にメリハリをつけたのも特徴。「ボリューム(サイズや葉の広がり方)の大きな木を植えたくて、通行や交通のジャマにならない場所に配置した。従来より数は減ったが、1本1本のボリュームが出て風格のある緑空間ができた」と舌﨑技師は語る。

 2015~2016年には合計4回、社会実験を実施した。土日の日中のみ実施していたのを1週間続けての実施にするなど、回を追うごとに、再整備が完了した場合の日常に近づけながら実験した。

 「社会実験の結果、1車線化しても、周辺道路を含めた自動車交通量に大きな影響はないことが分かった。しかし、この社会実験について報道などで『1車線化』ばかりが大きく取り上げられてしまい、クルマ社会ということもあって、ドライバーから不安・不満の声が上がった。ウォーカブルな街づくり、道路空間を使ったにぎわい創出といった本来目的を伝えられなかったのは反省点だった」と舌﨑技師は振り返る。

ハードとソフトの両面から県庁通りの魅力を高める(舌﨑技師の講演資料より)
ハードとソフトの両面から県庁通りの魅力を高める(舌﨑技師の講演資料より)
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地元の意見を吸い上げて道路空間デザインに反映

 そこで、2017年度からは、事業者・住民・行政が共に学び、意見を交わし、コミュニケーションを取れるよう、セミナーや勉強会、ワークショップなどを開催した。舌﨑技師は「およそ150軒の沿道事業者を訪ね歩いて、社会実験の結果を共有したり、ワークショップに誘ったりした」という。

 2019年度は具体的なビジョンを描いて共有する目的で、マーケット、公開会議、講演会をセットにした「デザインミーティング」を4カ月間に3回実施した。公開会議は街づくりの専門家と沿道事業者や行政関係者が車座になって県庁通りの未来を語り合うもの。

会議も講演も屋外で開催し、新たなプレーヤーを呼び込んだ(舌﨑技師の講演資料より)
会議も講演も屋外で開催し、新たなプレーヤーを呼び込んだ(舌﨑技師の講演資料より)
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 「会議も講演も、会議室ではなく、県庁通りに面したコインパーキングを借り上げて実施した。通りすがりの人が立ち寄ってくれたり、フェンスごしにでも聞いてくれたりして、新しいプレーヤーを巻き込むことができた。マーケットなど目に見える取り組みを始めたことで、沿道事業者や市民の興味・関心が高まった」(舌﨑技師)

 デザインミーティングで得られた意見はハード整備にも反映した。例えば、「県庁通りは岡山で最先端、都会的というイメージがある」という声が多く聞かれたことから、“アーバン”なデザインを採用した。また、沿道事業者から「イベント時だけでなく、日常的なにぎわいを創出するために、公共空間(歩道)を活用したい」という声があり、歩道空間の活用を前提としたデザインを取り入れた。民地側から1mの部分と、歩道が広い場所の車道側は活用を見越して、舗装ブロックの貼り方を変えている。

2020年の社会実験は「日常的に」にぎわいを生むことを意識。この実験は「低コストなので、道路管理者と警察との協議さえ整えば実施しやすい」と舌﨑氏。費用の使途は、警備、ポスター、民地から1mを示す養生テープなどだという(舌﨑技師の講演資料より)
2020年の社会実験は「日常的に」にぎわいを生むことを意識。この実験は「低コストなので、道路管理者と警察との協議さえ整えば実施しやすい」と舌﨑氏。費用の使途は、警備、ポスター、民地から1mを示す養生テープなどだという(舌﨑技師の講演資料より)
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 2020年度は9月末から5日間、歩道空間の利活用に関する社会実験を行った。沿道の各店舗が歩道に1mせり出して営業するというものだ。「店舗のにぎわいが屋外へ出てきて、屋外のにぎわいが逆に店舗へ入り込んでいく。(ベンチで飲食する)子どもたちの笑顔が見られて街の雰囲気が変わった」という。

 今後は、2022年度末に全線でハード整備が完了する見通しだ。ソフト施策は、都市再生特別措置法の道路占用許可の特例を利用して行っていく。「歩行者利便増進道路(ほこみち)」制度の活用も視野に入っている。 また、2020年の社会実験を踏まえて、活用ルールを検討するとともに、活用主体となる沿道組織の設立や、その沿道組織の持続的な運営方法を検討していくとした。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/report/040600268/