「Beyond Health」2021年3月31日付の記事より

Beyond Healthは、「健康で幸福な人生100年時代を可能にする」社会の実現に向けたビジョン「空間×ヘルスケア 2030」を提案し、それを具現化するためのプロジェクト「ビジョナリー・フラッグ・プロジェクト(VFP)」を進めている(関連記事:目指すは「空間×ヘルスケア」の社会実装)。その注目テーマの一つが、未来のワークプレース「Beyond Workplace」だ。

コロナ禍によって急速に普及したリモートワーク。同様にオフィス勤務の3密を避け、気分転換にも役立つとされるワーケーションは、働き方改革の波にも乗った新しい労働形態として、マスコミなどで取り上げられる機会が増えてきた。日本で今後、ワーケーションは定着するのだろうか。その現状、問題点そしてこれからの展望について、JTB総合研究所のヘルスツーリズム研究所長・髙橋伸佳氏に聞いた。

髙橋伸佳氏 JTB総合研究所主席研究員兼ヘルスケア推進室長(ヘルスツーリズム研究所長)、日本ヘルスツーリズム振興機構業務執行担当理事
髙橋伸佳氏 JTB総合研究所主席研究員兼ヘルスケア推進室長(ヘルスツーリズム研究所長)、日本ヘルスツーリズム振興機構業務執行担当理事
応用健康科学に基づいた観光‧旅行と医療‧健康領域の融合による新たなヘルスケア産業創出の研究、戦略策定が専門。近年特に「ヘルスケア発想によるワーケーション」の研究に注力している(写真:川田 雅宏)
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 ワーケーションは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語で、始まったのは2000年代の米国とされる。通常勤務しているオフィスから離れたリゾート地などで一定期間仕事を行い、勤務以外の時間を活用して観光やその地域特有の娯楽を楽しむもの。場所と時間に関して、仕事と休暇を密接させた働き方と言える。

 欧米では既に定着しているワーケーションが、日本でもクローズアップされた背景には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークの普及や働き方改革機運の高まりがある。インターネット環境が充実して自宅で働くテレワークが急速に広がり、多くの業種で業務に支障がないと判明。であれば自宅でなくとも、Wi-Fiなどのネット環境や設備がある観光地やリゾート地のホテルなどでも十分にテレワークが可能であることが明らかになった。

 働き方改革の観点からは、従来の会社員は「過酷な通勤ラッシュ」「仕事が終わっても自分だけ帰るのは気が引けて、結果長時間労働となってしまう」といった問題を抱えていたが、ワーケーションであればこうした問題も解決できる。また「帰宅が遅くなり家庭で家族と過ごす時間がとれない」という問題も、家族を同行させることで、仕事が終わった後は共にリゾート地での余暇を楽しむことができる。

 一般的には、企業側にとっても一定のメリットがあるとの通念がある。「社員がリフレッシュしながら仕事をすることで、仕事でたまったストレスを発散でき仕事の効率が上がる」「普段と違う環境下に身を置くことで、仕事に結びつく斬新なアイデアなどが生まれることが期待できる」「長期休暇を取ることにつながり有給休暇の取得が促進される」などの点だ。さらにワーケーションを含むリモートワークが常態化することで、「オフィスの面積を縮小したりできる」など、コスト面のメリットもあると見られている。

 国や自治体もワーケーションの推進には積極的だ。政府は自治体と連携した助成金・補助金制度を設立。北海道、沖縄県をはじめ、域内に多くのリゾート地を抱える自治体は、コロナ禍による観光収入の減少を補う目的もあって、ワーケーションのための環境整備に余念がない。