SIBがサービス品質を向上させる。

 パネルディスカッションでは、SIB事業で感じた課題や苦労、あるいはその解決策などについて語った。公文教育研究会の伊藤氏は、高齢者の一番のモチベーションは「やりがい」や「生きがい」にあることから、自治体の担当者に「金銭的な側面だけでなく、それらにも意味があることを理解してもらうことが難しかった」と振り返る。そして、その価値をしっかり確認してもらい、「事業拡大のモチベーションを一緒に育む」ことの必要性を説いた。

パネルディスカッションの様子(写真:近藤寿成)

 くまもと健康支援研究所の松尾氏は、連携する自治体や企業がある程度納得するために「データは非常に重要だ」と話す。また、介護サービスを利用しない日をアクティブに過ごせるような場所があれば「今後の事業拡大にさらなる広がりを見出せる」と考えるほか、事業の見せ方などにおいて「首長や議員に理解してもらうための工夫が求められる」と助言した。

 徳島ヴォルティスの谷氏は、「効果の可視化はいまでも難しい」と実感を込める。ただ、仲間(=賛同者)を集めようと心掛けたことで物事が進んだことから、「一緒に戦ってくれる同志を集めることが大切」という。また、事業に対して「上手くやろう」と思うのではなく「一生懸命やる」ことの重要性を説き、その姿勢は「必ず人に伝わる」と力強く語った。

 関係者への理解については、日本財団の藤田氏も「直面する課題」として賛同する。さらに、自治体では「担当者に左右される部分が多い」と指摘。トップの理解が重要なのはもちろんだが、トップダウンで担当者が対応するとその担当者にやる気がないケースも少なくないため、「そうなると実現は難しい」とこれまでの経験から話す。ただし、内部に前向きな人(とくに財務部の理解者)がいれば「挽回するチャンスはある」とのこと。また、企業側がやる気のある自治体を見つけたい場合は、「自治体と関係性のある金融機関に相談するといい」とアドバイスした。

 日本総合研究所の石田氏は、将来のコスト削減などがSIBで重視されがちなことに触れつつも、実際には多くの人が「経済面よりも事業の中身の質向上に意義を見出している」と感じている。今後、介護予防や健康な人の健康維持などの事業においては、そういった部分の共通認識が「さらに大事になる」と指摘する。また、成功事例が出ていながら「横展開が思ったほど進んでいない」ことを問題意識として挙げ、これまでの知見を集約して「横展開しやすい環境づくりが必要になる」と締めくくった。