楽しいボランティアは長続きする

「まちの在りようは、長い間の積み重ねによって出来上がってくるもの」と語る西芝雅美氏(写真:神近博三)

 ポートランド市の2017年のボランティア参加率は44.3%であり、全米51の主要都市の中で第6位。年間の参加者数は86万3670人、1人当たりの年間ボランティア時間の平均は38.3時間となる。

 西芝氏が日米のボランティア参加者に参加の動機を非公式に尋ねたところ、米国では「コミュニティをよくしたい」「社会制度をよくしたい」「人のために役立ちたい」という社会的動機、「ネットワークをつくりたい」「学び」という個人的動機、それに「単純に参加して楽しいから」という回答が多かった。これに対して、日本で同じ質問をすると「他の人が参加しているから」「立場上、参加の必要がある」「組織の一員として参加した」という義務感からの参加者が多いという。

 「(日本のように)義務感で参加しているボランティアは長続きしない。ポートランド市、あるいは米国のボランティア参加率が高いのは、社会的動機、個人的動機が多いから。コーディネーターも楽しいボランティアになるよう常に工夫している」(西芝氏)。

 住民の自治組織であるネイバーフッド・アソシエーション(NA)は、市に認められた公式な組織であり、年間3000~5000ドルの活動予算など市から様々な支援を受けている。その活動内容は、都市計画策定への参加、歴史的建造物の保存活動、低所得者向け住宅の開発提案など。日本の町内会のような世帯単位ではなく、個人単位で自主的に参加する。ポートランド市には94のエリアごとにNAがあり、各NAは7つのNA地域連合(Coalition)のいずれかに所属する。NA地域連合はポートランド市の各部局とNAとの懸け橋になる「Office of Community and Civic Life」と契約関係にあり、各NAの代表者は理事会メンバーとして所属するNA地域連合に参加する。

町内会とネイバーフッド・アソシエーションの違い(西芝氏講演資料より)
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 熱心な住民運動やNAの声を受け止めるために、行政側も「話し合いの場」を積極的に用意してきた。例えば、ポートランド市の未来構想を描く「ビジョンPDX」(2005~08年)、ポートランド・プラン(2009~12年)、総合計画改定(2013~15年)の策定過程における住民参加プロジェクトである。

 これらのプロジェクトではアンケートなどで住民の声を吸い上げるために、NPOなどの力を借りて様々な試みに取り組んできたという。例えば、イベント会場に派手なトラックで乗り付けて来場者にお茶をふるまいながらアンケートを採る、ホームパーティを開く、などだ。

 住民との話し合いの場には、地域の代表であるNAだけでなく、移民・難民、ラテン系住民、ネイティブアメリカン、アフリカンアメリカン、ホームレス、障害者、高齢者、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者など、様々な行政サービス対象者の団体代表からも意見を聞く場を設けた。「地縁ベースのNAだけが必ずしも住民の声を代表しているわけではない」という考え方からだ。

 「日本では多くの場合、“専門家”である行政が計画を立てて、『こういう風にします』ということをまず決めたうえで住民から意見を聞く。だが、ポートランド市はそうではない。住民が早期段階から参加することや、質の高い参加プロセスを選択すること、透明性などについて定めた市民参加原則をつくり、この原則が実行されているかをチェックする諮問機関を用意している」(西芝氏)。