技術で多様性を実現し、人それぞれの幸せを

 石黒氏は今後のカギとなる視点として、多様性を強調した。「例えば、現実世界で働くということは一つのアイデンティティで、一つの仕事しかしていない状態。だからその一つのことでうまく行かないと立ち直れないみたいなことが起こる。一つの世界でうまくいかなくても別の世界でうまくいけばいい。そうなれば人それぞれ幸せになれる」(同氏)。

大阪大学大学院基礎工学研究科栄誉教授、ATR石黒浩特別研究所所長(客員)の石黒浩氏。これからは働き方の多様性が重要になると語った
大阪大学大学院基礎工学研究科栄誉教授、ATR石黒浩特別研究所所長(客員)の石黒浩氏。これからは働き方の多様性が重要になると語った
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 それを実現する一つの方法が、同氏が研究している遠隔操作ロボット、アバターだ。同氏は子供の集まる場所にロボットを設置し、遠隔地から高齢者など様々な人に操作、会話をしてもらうという実験を行っている。この実験のポイントは2つあるという。

 1つは離れていても対話ができるということ。例えば、これを発展させて泉北ニュータウンで暮らしながらアバターを使って大阪市内で働くということも考えられる。もう1つは見た目が変えられるという点。姿が変わると人は普段と違う自分になれるという。実験では操作側で参加した高齢者が元気になり、喜んでもらえたという。「僕たちは人間の体に縛られすぎている。体に縛られているから差別や不平等といったことが起こる。技術はそういったものを解き放ってくれる」(石黒氏)。