東京文化資源会議(会長:伊藤滋 東京大学名誉教授)は、上野公園の夜間の盛り上げを通じて日本の成熟社会のあり方を国内外へ示す「上野ナイトパーク構想」に関するシンポジウムを開催した。シンポジウムでは、上野エリアの歴史を振り返る基調講演や、上野ナイトパーク構想の概要説明、そして有識者が意見を持ち寄るパネルディスカッションが行われた。登壇者の発言要旨を以下にまとめる。

パネル・ディスカッションの様子(写真:赤坂麻実)
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昼夜のギャップを解消し、新しい都市生活のあり方を発信

 東京文化資源会議は、東京の北東部、谷根千、根岸一帯、上野、本郷、秋葉原、神田、神保町、湯島に至る半径2kmの徒歩圏の「東京文化資源区」と名付けたエリアの特性を生かしたプロジェクトや提言を行う任意団体。「上野ナイトパーク構想会議」は2018年10月、東京文化資源会議が夜間における上野公園文化資源・施設の全面的な活用策について関係各方面へ提案を行うことを目的に設立した。座長は東京大学名誉教授で山梨県立美術館長である青柳正規氏だ。

東京文化資源会議では、上野を含む半径2kmほどの一帯で文化資源を生かしたプロジェクトを推進している(資料:東京文化資源会議)
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東京文化資源会議の伊藤滋会長(写真:赤坂麻実)
上野ナイトパーク構想会議の青柳正規座長(写真:赤坂麻実)

 2019年4月3日に開催したシンポジウムでは、まず東京文化資源会議の伊藤滋会長が「東京を東西に分けたとき、東が下町で西が武家屋敷のルーツを持っているのは有名な話。南北に分けたときは、文化的な伝統として、北は控えめで落ち着きがあり、南は活気があって経済活動が得意だ。われわれとしてはまだポテンシャルを発揮しきれていない東京の北側エリアの有形・無形の文化資産を、国内外へ積極的に発信することを考えたい」と、上野ナイトパーク構想の前提となるエリアの魅力について説明した。

 次いで、上野ナイトパーク構想会議の青柳座長が、シンポジウムの開催趣旨を次のように説明した。

 「上野は(主要な文化施設の運営者がまちまちだが)国や都、区らが協力し合えば、面的に、かつ立体的に、さらには時間的にもシームレスな空間を作ることができ、“東京のヘソ”になりえる。国内外から多様な人々を迎え入れるアライバル・シティとしての上野の再生を目指し、活発な議論を進めていきたい」

寛永寺の長臈である浦井正明氏(写真:赤坂麻実)
東京文化資源会議の柳与志夫事務局長(写真:赤坂麻実)

 パネルディスカッションに先駆けての基調講演は寛永寺の長臈である浦井正明氏。上野の歴史を文献や出土品から振り返った。浦井氏によれば、現在の上野エリアでは縄文・弥生時代の遺跡が見つかっており、北条氏が栄えた頃には家臣の所領地として「上野」の地名が文献に記載されていたという。江戸時代には徳川将軍家の菩提寺として寛永寺が建立され、初代住職の天海がさまざまな植栽を施し、江戸の庶民が参拝と共に町の散策を楽しめる環境を上野に整えた。

 明治時代には日本最初の公園として「上野公園」が生まれ、内国勧業博覧会が3度にわたって行われる。ただし、「ガス灯が整備されるのが大正時代。明治後期にも雨でも降れば公園は鬱蒼として薄暗い環境だったという話が伝わっている」と語り、“夜間の上野”の発展が遅れがちだったことを紹介した。

 続いて東京文化資源会議の柳与志夫事務局長が、上野ナイトパーク構想の概要を次のように説明した。

 「上野公園は明治政府が文化政策の一環として整備・発展させた歴史があり、例えば代々木公園や駒沢公園とは成り立ちが異なる。その伝統にのっとって、日本の成熟社会のあり方を示すカルチャーパークとして、上野公園を活用することを構想している。(運営者同士の連携が浅いことによる)公園内の文化施設間の分断、周辺地域との分断、(昼間のにぎわいに対して夜間が閑散とする)昼夜の分断という<3つの分断>を解消し、昼夜を問わないアライバル・シティとして上野を再生させたい」

上野を成熟型社会の見本として国内外に示すことを構想している(資料:東京文化資源会議)
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上野ナイトパーク構想会議で想定したスケジュール(資料:東京文化資源会議)
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「上野ナイトパーク構想会議」委員一覧
青柳正規(東京大学名誉教授・山梨県立美術館長):座長 /岡室美奈子(早稲田大学教授・演劇博物館館長) /隈研吾(東京大学教授・建築家) /小泉秀樹(東京大学教授) /小林正美(明治大学副学長・教授) /デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社代表取締役社長) /林家正蔵(落語家) /廣瀬通孝(東京大学教授) /増田寛也(野村総合研究所顧問) /南学(東洋大学客員教授) /村井良子(プランニング・ラボ代表取締役) /吉見俊哉(東京大学教授)