日常生活の中で自然に健康づくりができる新しい価値観の創出を

 鈴木氏は「コロナ禍でリモートワーク推奨が続き、通勤の身体活動量が減っている。身体活動のみならず、メンタルへの影響もあるかもしれない」との危機感を示した一方で、「必ずしもマイナスな点だけではない。今まで、家は単に寝に帰るところだったが、コロナ禍で家が仕事をして長時間暮らす場所にもなっている。その点では、若い働く世代の力をいかに地域に活かしていけるかという可能性も生まれている」との視点を提示した。

厚生労働省 顧問(初代医務技監)/国際医療福祉大学 副学長の鈴木康裕氏
厚生労働省 顧問(初代医務技監)/国際医療福祉大学 副学長の鈴木康裕氏
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 小沼氏も就労世代の身体活動量の減少について、鈴木氏に賛同した上で、スポーツ庁が提言しているコンセプト「Sports in Life」を紹介した。生活の中に、散歩やヨガなどのスポーツが自然に溶け込むという造語で、現在、同庁はこの趣旨に賛同する自治体や企業などの関係団体(2021年3月現在、1121団体)でコンソーシアムを構成。スポーツを行うことが生活習慣の一部になる暮らしづくりに向けて支援を続けているという。「コラボへルス、健康経営など企業同士で取り組みを情報交換しつつ、発展してもらいたい。ビジネスパーソンは人口のボリュームゾーン。40、50代から企業ぐるみで健康増進への対策を行うことで、高齢期に入っても健康に過ごしてもらえるのではないか」との考えを語った。

スポーツ庁 健康スポーツ課長の小沼宏治氏
スポーツ庁 健康スポーツ課長の小沼宏治氏
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 小熊氏はこれに対し、「小沼氏のプレゼンテーションでも示された通り、日本でも若い就労世代、特に女性で身体活動が少ないことが分かっている。解決のためには、得意分野を生かした協同が大切」と補足。さらに、超高齢社会に立ち向かう日本で求められる新しいソリューションについて、パネリストに意見を促した。

 飯島氏は「国民が健康増進に“新しい風”を感じられることが重要」と提言。前述のフレイル予防についても、従来のようにただたんぱく質豊富な食事を摂る、運動に気を付けるなどに留まらず、エンジョイ・レジャーのような要素を加え、異業態同士のコラボレーションによって、日常生活の中で自然に健康増進につながるという観点が重要であると付け加えた。

 鈴木氏は、誰ひとり取り残さないSDGsの観点から、買い物難民への対策の必要性について語った。高齢になると免許を返納して公共交通機関に頼らざるを得なくなり、外出しにくくなる。移動コンビニのような街のインフラのように、「人々に出てきてもらう場」をつくることも必要であると指摘した。

 小沼氏は、「日本のスポーツ環境は、学校教育での体育の授業や成人の職域保健など非常に整ってはいるが、より体系化して街づくりとつなげる、ライフサイクルに合わせたスポーツ環境、システムをどう作るかという視点も大切だ」と提言。進行中のスポーツ基本計画の見直しも、そうした観点から進めたい考えを示した。

 小熊氏はこれらに対して、日常生活の中で自然に健康づくりができる新しい価値観を、「今後、(産学官)みんなでつくっていくことが重要。買い物難民は一例だと思うが、誰一人取り残さないという視点や、そのための色々な意味でのシステム作り、連携が求められる」と締めくくった。

慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科 准教授の小熊祐子氏
慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科 准教授の小熊祐子氏
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