市民への情報伝達は難しい課題

 ミーティングでは、パネルディスカッション形式の意見交換も行われた。登壇したのは、研究会に参加する西宮市の石井登志郎市長、国立研究開発法人である防災科学技術研究所 総合防災情報センターの臼田裕一郎センター長、GLOCOMの櫻井准教授。モデレータは慶応義塾大学 総合政策学部の國領二郎教授が務めた。

 西宮市は1995年1月の阪神淡路大震災で被災した直後に、情報政策部(当時)の職員が日常業務の復旧と並行して、被災者支援システムを自ら開発し、罹災証明書の発行などの各種業務や被災者支援、復旧・復興業務に役立てた。その後、東日本大震災で被災した自治体からの要望などを取り込んで改良を重ね、多くの自治体で活用されている。

兵庫県西宮市 市長 石井登志郎氏(写真:柏崎吉一)

 石井市長は、「2018年も地震、豪雨、台風など大規模な自然災害が立て続けに起こり、停電や浸水に見舞われた。こうした災害対応の現場では気象庁、兵庫県、国土交通省、市民から寄せられる情報が飛び交う。安否確認やライフラインの復旧に関する情報を求める市内外からの様々な問い合わせも集中し、コールセンターがパンクしたこともあった。土砂崩れの恐れがある地域で孤立しそうな方に避難勧告のために市役所から直接電話をかけたり、消防団の人に選挙カーのようにスピーカーを積んだ車で回ってもらったりと、アナログ的な方法を駆使して対応したこともあった」と振り返った。

 そのうえで、「被害を最小限に抑え、市民の皆さんに安心感を持ってもらえるか。そのために災害対応に必要な情報を収集し、編集・分析した上で、どのような手段で届けるか。情報伝達は、市にとって常に難しい課題だ」(石井氏)との認識を語った。

避難所の運営や支援物資の管理で市民と連携

 さらに、「役所ができる公助にはどうしても限界がある」と石井氏は指摘する。「市の職員だけですべての避難所を開設し、管理するのは手が回りきらない。理想を言えば、町内会などが自主的に避難所を開設し、町内会長から役所に『この場所に地域住民が避難している』と連絡があるような姿が望ましい。各地域の市民が自ら回していくという自助・共助で地域を強くしていくことが大事だ」(石井氏)。

防災科学技術研究所 総合防災情報センター長 臼田裕一郎氏(写真:柏崎吉一)

 防災科研の臼田センター長によると、すでに取り組みを始めている地域もある。「そうした地域では平時から、『避難所運営は共助なので市民の皆さんでやっていただくのが基本』ということを前提にしている。その上で、市民が『避難所の運営は自分たちでやるから、物資をここまで届けてくれないか』『この避難所からはこの地域とこの地域が遠いので、そこを市でカバーしてもらえないか』と市の方に頼る。共助をしている市民の側から、足りない部分の公助を求めるという形が広まれば課題解決にもつながる」(臼田氏)との見方を示した。