コミュニティとそれを支える人をどう育てるか

 「まちに住んでいる人たちが、活動し、生活し、人生を構築しようと思うこと。これがまちづくりの原動力」と語るのは、コミュニティデザイナーとして活動する山崎亮氏(studio-L代表/コミュニティデザイナー/社会福祉士)である。山崎氏は建築家およびランドスケープデザイナーとして活動する中、「地域の課題は地域に住んでいる人が解決する」というコミュニティデザインに着目。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントのプロジェクトに関わってきた。コミュニティデザインに関する著書も多数ある。

カンファレンスに登壇した山崎亮氏(画像左下)と東急電鉄の東浦亮典氏(執行役員・渋谷開発事業部事業部長)
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 山崎氏は「ヒーリングガーデナー」の事例を挙げつつ、公園などの施設と福祉・介護の在り方を考える材料を提示した。

 ヒーリングガーデナーは高齢者や障害を持つ人のために、公園散策を手伝う公園案内のボランティア。現在、大阪府の公園事業の一環として運用されている。ヒーリングガーデナーには養成講座が設けられており、講座では住居を出て公園を回遊し、帰宅するまでの一連の流れを支援するボランティアを育成する。府営の公園ではヒーリングガーデナーにより、季節の公園案内やクラフト作りなど様々なプログラムが展開されている。山崎氏がこの例を通じて示唆するのは、施設を幅広く楽しんでもらうためのコミュニティの重要性だ。

 山崎氏は「(専門家が主導者として)コミュニティデザインに入り込みすぎるのは、あまり良くない。そこに住んでいる人たち自身が考えてまちづくりをすることが大切で、それをいかに支援するかがポイントだ」と強調した。「料理に例えるのは適切ではないが、人はまちという”料理”をつくるための、重要な“材料”のひとつ。材料自身が考え行動するように支援していくことが大切」(山崎氏)。

 また、地域で福祉・介護やまちづくりに関わる人々に対して、市民の主体性が求められていると強調する。「過去には、神のようなすごいシェフがすごいことをやってくれる、という時代もあった。しかし今はそうではない。材料である自分たちが、(地域という)“冷蔵庫”の中身を見て、一人ひとりがシェフとなるという時代だ。もう一回冷蔵庫の中をくまなく見てみると、新しい発見があるかもしれない」(山崎氏)。

 東急電鉄の東浦亮典氏(執行役員・渋谷開発事業部事業部長)は、新型コロナウイルス対策を踏まえた「アフターコロナ」の観点から、福祉とまちづくりを展望した。

 東浦氏は「少子高齢化や新型コロナのことを踏まえて考えると、個別の施策に対して潤沢な予算がつくということは考えにくくなってくる。つまり、医療福祉は医療福祉、まちづくりはまちづくりといったような、従来の個別の事業分野や予算区分ごとに施策を考えるのは理にかなっていない」と指摘する。「誰もが住みやすいまちにするためには、複数の分野の人が協力しながらホリスティック(全体的)にアプローチすることが必要ではないか」(東浦氏)。

 またスペインのバスク地方などでは市民主導の食のコミュニティである「ソシエダ・ガストロノミカ(会員制美食クラブ)」を挙げ、「こういう街の活動が増えるといい」とコメント。世界各地における市民の主体的かつ大規模な活動は、ホリスティックなアプローチを進めるうえで追い風になるとの趣旨を述べた。