既存住民と移住者との信頼関係をどう形成するか

 島根県雲南市でコミュニティーナースの事業を展開するCommunity Nurse Companyの中澤ちひろ取締役は、2015年にNPO法人で訪問看護事業の立ち上げに携わった際のことを振り返った。

 中澤氏は「その土地に必要なものだという確信があったとしても、事業を進めるうえでは以前からそこに住んでいる地域の人との信頼関係が重要だ」と述べる。「『いつかここから出ていくんでしょ』と思われている間は、うまくいかない。地域の中で『信頼貯金』をためていき、地域にいる人と一緒につくり上げていくことが大切」(中澤氏)。

島根県雲南市でコミュニティーナースの事業を展開するCommunity Nurse Companyの中澤ちひろ取締役(画像右上)。島根県の離島・隠岐諸島中ノ島にある海士町で、海士町社会福祉協議会の事務局長を務める片桐一彦氏(画像右下)、旅人カップルでユーチューバーの「せかたん」だいご氏(介護福祉士)ともか氏(画像上中央)らと対談した。画像下左は対談のモデレーターを務めた小野裕之氏
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 島根県の離島・隠岐諸島中ノ島にある海士町で、海士町社会福祉協議会の事務局長を務める片桐一彦氏は、コミュニティにおける移住者の重要性を語った。片桐氏は東京都出身。海士町社会福祉協議会のソーシャルワーカーとして働きながら2002年にNPO法人海士人(あまじん)を設立し、定住促進事業など町のIターン推進施策にも携わってきた。

 片桐氏は「地域の価値は外から気づくことが多い。新規移住者と前から住んでいる住民との交流は、その地域ならではの価値を再発見するきっかけとなる」と指摘した。「今はオンラインでもつながれる時代。新型コロナウイルスが、期せずしてオンラインで交流する動きを促している。島を“卒業”して『第2町民』として活動している人ともつながりながら、コミュニティを盛り上げていければと思っている」(片桐氏)。

 「都会の視点で田舎の“いいとこどり”をしようとしてもうまくいかない」と注意を促すのは、モデレーターを務めた小野裕之氏である。都市部の住人の視点では自然環境や食などの良い点が目につくが、「医療・福祉・介護のシステムを含めて、誰がその地域の産業、コミュニティ、文化を維持し、育て、継承していくのかというのが常に課題となる」(小野氏)。それゆえ、地域の持続性を織り込んだ移住促進策を立てることが望ましいとの趣旨を述べた。小野氏はソーシャルデザインやまちづくりに関わる事業開発・再生のプロデュース事業を手掛けている。