障害のある人や福祉の世界を“まちのアート”で自然に浸透

 「福祉実験ユニット」を称するヘラルボニーの松田崇弥氏(代表取締役社長CEO)と松田文登氏(代表取締役副社長COO)は、自社のアート事業と地域の関係性について触れた。ヘラルボニーは全国の知的障害を持つアーティストの作品をプロデュースする事業を展開している。事業の主な柱は、アーティストの作品を配したアパレルプロダクト、住宅や建設現場などの仮囲いにアート作品を飾るプロジェクトなどだ。

 双子の兄であるCOOの文登氏は仮囲いにアート作品を飾るプロジェクトについて、その狙いを説明する。「障害のある人がつくるアート作品には、私たちが普段の生活では見ることのない創造的な表現がふんだんに盛り込まれている。障害者や福祉と接点がない人にも、こうしたアート作品を届けたいと考えた」とする。

 アート作品が飾られた仮囲いを、いわば地域に根ざした「ソーシャル美術館」と見立てている。「障害のある人や福祉の世界と接点がないという人の日常にも、仮囲いを通じてアートがなじんでいき、その結果として『これは障害者が生み出したアートなのだ』という認識が広まることを狙っている」という。「そうすれば、(地域や家庭における)障害のある人の扱い方や育て方が変わっていくはず。障害のある人の生き方が、そのまちを通して変わっていくことを狙っている」(文登氏)

 双子の弟であるCEOの崇弥氏は、最近死去したアーティスト、八重樫季良(やえがしきよし)氏のエピソードを明かした。享年64、入院していた病院でもアートを描いていたという。葬儀には八重樫氏が描いたアート作品を並べ、同氏のアート作品を使ったプロジェクトを実施した岩手県花巻市からは弔電が寄せられたという。親戚は、障害があった同氏がアート作品を描いていたことを知らず、葬式を通じて印象が大きく変わった様子だったと話す。「知ることはとても重要。まちに配したアート作品を通じてそのようなことをさらに促していきたい」(崇弥氏)。