新型コロナでニュータウンのまちづくり方針を見直し

 大和ハウス工業の瓜坂氏は「Withコロナ、Afterコロナにおける健幸都市の方向性」と題して、横浜市栄区にある「上郷ネオポリス」における取り組みを紹介した。上郷ネオポリスは1970年代に同社が開発したニュータウン。2019年9月現在の居住者人口はおよそ2000人、世帯数は868であり、高齢化率(65歳以上の高齢者人口が人口に占める割合)は50%を超えている。「個々の住宅のメンテナンスはもちろんやってきたが、まちづくりの方向性をどうするかまではやっていなかった。このため、2014年に(上郷ネオポリスを今後どうしていきましょうかと)初めて訪問したときは『今さら、なんだ』というアウェイな状況だった」(瓜坂氏)。

 そうした中で、大和ハウス工業は時間をかけて住民との話し合いを進め、2016年6月に自治会とまちづくり協定を締結。2019年に東京大学の郊外住宅地再生社会連携研究部門へ参加するとともに、2020年1月には横浜市ともまちづくりに関する協定を締結し「住民と産官学のスクラムを構築した」(瓜坂氏)。

上郷ネオポリスの概要とこれまでの経緯(資料:大和ハウス工業)
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 2019年10月には、上郷ネオポリス内にコミュニティ拠点「野七里テラス」がオープンした。これは、住民が気軽に集まれるお茶会の場となるもので、コンビニエンスストアのローソンを併設する。「第一種低層住宅専用地域の上郷ネオポリスには喫茶店がなく、住民が集まる場所がなかった。そこで、住民からの要望を受けて野七里テラスを作ることにした」(瓜坂氏)。コンビニも住民の要望を受けて併設したもので、店長、バイトはすべて住民だという。野七里テラスの清掃やメンテナンスもボランティアの住民が担当しており、ボランティアに1時間半参加するごとに、併設のコンビニで割引を受けられる地域内通貨1枚を支払っている。

野七里テラスの様子(上)、ボランティアのユニフォームや地域内通貨(下)(資料:大和ハウス工業)
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 お茶会などで「密」なコミュニティを育てるというまちづくりの方針は、現在、新型コロナによって見直さざるを得なくなっている。このため、大和ハウス工業では自治会館に遠隔対話の機能を持つパーソナルアシスタントロボット「temi」を設置。大和ハウス工業の担当者や住民がパソコンからtemiを操作して、自治会の定例会にリモートで出席できる体制を整えている。

遠隔対話機能を持つロボットを自治会館に設置した(資料:大和ハウス工業)
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 さらにAfterコロナに備え、上郷ネオポリス内の空き家を、サービス付き高齢者向け住宅や現役世代のためのテレワークスペースに改修することも検討している。高齢者向け住宅では他の入居者から感染が大きな問題になる。だが、徒歩圏内に職員が常駐する戸建ての分散型住宅であれば、そうした感染の拡大を抑えることができる。テレワークスペースは、高齢者が遠隔診療を受ける場所としても利用する。

 このほか高齢者のバス停までのラストワンマイル対策として、電動カートや電動車椅子の評価にも取り組んでいる。すでに2019年にヤマハ発動機の電動カートを試走させており、2020年秋には電動車椅子「Whill」を20台導入して、使い勝手や安全性を検証する予定だ。

空き家をサービス付き高齢者向け住宅に改修することを検討(上)、電動カートや電動車椅子の評価にも取り組んでいる(下)(資料:大和ハウス工業)
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