「Beyond Health」2022年7月19日付の記事より

目指す姿に「挑戦を誇れる街」を掲げる青森市。この言葉に則り、これまでさまざまなチャレンジを進めてきた。2019年2月、フィリップス・ジャパンと締結した「ヘルステックを核とした健康まちづくり連携協定」もその1つである。

背景には、青森市が抱える健康課題がある。高齢化率は全国平均の28.8%を上回る33.3%と高く、実に3人に1人が65歳以上となっている。加えて青森県は“日本一の短命県”として知られ、健康寿命延伸に向けて早急な対策を講じる必要に迫られていた。

先の協定では、事業推進共同体として「あおもりヘルステックコンソーシアム」を結成。青森市をフィールドに産官が一体となって健康寿命延伸に資する実証を重ね、有益な社会実装に結びつけることを目的としている。コンソーシアムにはカゴメ、インテグリティ・ヘルスケア、損害保険ジャパン、凸版印刷、ネスレ日本、トヨタ車体などが参加。2020年度から具体的な事業を開始した。

 初年度に着手したのは、フレイル(身体的な衰え)/生活習慣病を対象とした「モビリティを活用した予防サービス」(以下、予防サービス)、訪問看護利用者/独居高齢者向けを対象とした「IoTを活用したみまもりサービス」(以下、みまもりサービス)の2つ(関連記事:“偶然の出合い”をモビリティで演出、無関心層へのリーチ目指す。2021年度には、これらサービスから蓄積されたデータ分析、およびみまもりサービス実施拠点として青森市立浪岡病院内に「あおもりヘルステックセンター」を開設した(関連記事:どこでも簡易ヘルスチェック、その現場を見た。このタイミングで新たに青森県立保健大学と連携協定を交わし、産官学による体制強化を図っている。

 2022年5月17日には青森市役所本庁舎にて、あおもりヘルステックコンソーシアム事業報告会が開催された。冒頭、青森市長の小野寺晃彦氏は事業の順調な経過について触れるとともに、「青森市での実証を成功させ、全国への展開を皆さんとともに実現していきたい」と語った。

青森市長 小野寺晃彦氏(写真:小口 正貴)
青森市長 小野寺晃彦氏(写真:小口 正貴)
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 続いてフィリップス・ジャパン ソリューション事業部 本部長の古濱淑子氏が2022年度の活動実績を報告した。古濱氏は「青森市が抱える課題は日本のどこでも起こり得るもの。実証フィールドの中心となった青森市浪岡地区(旧浪岡町)は、高齢化率・人口密度が全国の市区町村の中央値に近いため、全国のモデルになり得る。実証を継続し、社会の変革をリードしていくのが狙い」と、改めて連携協定の意義を語った。

 予防サービスは要介護手前の高齢者や働き盛り世代を対象に、専用モビリティによる簡易ヘルスチェックと予防プログラムを提供し、2022年度は合計228名が参加した。ここから得たデータを解析した結果、血圧、運動習慣、野菜摂取量それぞれの項目で約7割が健康リスクが高いことが浮かび上がった。

フィリップス・ジャパン ソリューション事業部 本部長 古濱淑子氏(写真:小口 正貴)
フィリップス・ジャパン ソリューション事業部 本部長 古濱淑子氏(写真:小口 正貴)
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 「さらに、オーラルフレイル(口腔内の衰え)のリスクが高いことも明らかになった。80歳まで自分の歯が20本以上ある『8020運動』に照らし合わせると、80代の全国平均が51%に対し、今回のターゲットは26%とおよそ半分の数字。こうした問題の顕在化は予防サービス事業の成果と言えるだろう」(古濱氏)

 また、浪岡地区の中でもとくに特定健診受診率が低かった吉野田地区で予防サービスを実施したところ、実は約8割が健康への高い意識を持っていることが判明した。「つまり、受診の意欲があるのに足を運んでいないということ。モビリティ活用の予防サービスが行動変容を促すきっかけとなる可能性は高い」と古濱氏は話した。

予防サービスの専用モビリティ(写真:小口 正貴)
予防サービスの専用モビリティ(写真:小口 正貴)
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専用モビリティでは簡易ヘルスチェックが受けられる(写真:小口 正貴)
専用モビリティでは簡易ヘルスチェックが受けられる(写真:小口 正貴)
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 もう1つのみまもりサービスでは、自宅にベッドセンサー、トイレセンサー、ルームセンサーなど各種センサーを配置し、遠隔からの24時間みまもりを可能にする高齢者・在宅患者サポートモデルの構築にトライしている。

 古濱氏は「現在15名の高齢者、訪問介護を必要とされる方々にサービスを提供。パートナーとともに、これからニーズが増大する在宅医療の機能化・高度化を図っていく」とした。だがテクノロジーは、あくまで最初期の検知に過ぎない。そのため訪問看護ステーションと密接に連携し、「属人的な運用に陥らない体制の確立を目指す」と結んだ。