在宅医療関連の2つの学会が今年5月に合併して発足した日本在宅医療連合学会が、7月14・15日に東京で第1回大会を開いた。大会のテーマは「ひとつになる」。医療、福祉、介護に自治体も加わった連携、さらには将来のまちづくりも視野に入れて、行政や医師会、介護事業者など関係機関のシームレスな連携についても議論された。

医師会との連携が全県設置の原動力

 2018年4月までに、自治体が主体となって全市町村に設置された「在宅医療・介護連携支援センター」。行政や医師会、介護事業者など関係機関のシームレスな連携を実現するため、地域資源の把握、課題抽出と対応策の検討、研修など表に掲げた8項目の事業に取り組む。この組織の現状と課題については、シンポジウム3「『在宅医療介護連携支援センター』と地域包括ケアシステム」で議論された。

国が定めた在宅医療・介護連携支援センターの8つの業務
(出所:厚生労働省)
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 まず、中山美由紀氏(社会医療法人財団大和会東大和市在宅医療・介護連携支援センターなんがい)が、市内3カ所の地域包括支援センターのうち2カ所に併設した同センターについて紹介。在宅看取りの増加やICT(情報通信技術)による情報共有ツールの積極的な利用を課題として挙げ、今後共生社会のまちづくりを目指すために、連携でつながりを持った関係者が「能動的なまちづくり」の意識を高める必要があると指摘した。

 次に医療法人友愛医院の亀井敏光氏が、2015年4月に松山市医師会が開設した松山市在宅医療支援センターの活動について話した。①在宅医の支援、②在宅医療に関連する各医療機関および多職種との連携機能、③市民に対する在宅医療の相談窓口――が活動の3本柱。地域の在宅医療推進に寄与したと亀井氏は自負する。

 3人めの演者は豊明東郷医療介護サポートセンター「かけはし」の池田寛氏。同センターは藤田医科大学、豊明市、東郷町、東名古屋医師会の協力・連携で運営されている。厚生労働省が必須とした8つの事業に加え、看護師など市内の専門職団体の設立や運営の支援、消防や救急との情報共有、市主催の多職種ケアカンファレンス開催時にアドバイスを行うなど、独自の取り組みを行っている。

 最後に登壇したのは、埼玉県保健医療部医療整備課の荻野和博氏。医師会と協働して在宅医療・介護連携支援センターの全県展開を図った経験を語った。埼玉県では、下の図のような3つの段階を踏んで、2017年4月までに県内30の医師会すべてに合計33カ所の同センターを設置し、2018年4月に各市町村への移管を済ませた。

埼玉県の在宅医療・介護連携支援センター全県展開の進め方
(埼玉県保健医療部医療整備課・荻野和博氏の講演資料より)
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 看護師を中心に総勢55人のコーディネーターが在籍し、4年間に患者やその家族、医療機関やケアマネジャーなどからの1万7000件を超える相談に応じた。県医師会のリーダーシップと郡市医師会の理解・協力がカギだったという。現在は、グループチャットの活用や研修会の実施によって、コーディネーターの悩み解消や絆づくりを図っている。

 「フレイル予防」「リハビリ」「地域看護」など、様々な切り口でシンポジウムが開催された「まちづくり」(下の表)。それらのうち、公民連携と密接な取り組みが報告されたセッションとして、まずシンポジウム29「独居高齢者等の在宅看取りが可能となるまちづくり」が挙げられる。

第1回大会で開催された54のシンポジウムのうち、タイトルにまちづくりを含むもの(学会抄録より)
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 この中で多摩市役所の伊藤重夫氏は、急速に高齢化が進む多摩ニュータウン団地での実践例、多様な主体による「多摩市永山モデル」について、協働している医療法人の職員2人と共同で発表した。

年6000件の相談が窓口に

 2000年に約10%だった多摩市永山地区の高齢化率は、2019年には33.6%に達し、20%超が一人住まいの高齢者世帯となった。そこで、多摩市は団地内の商店街に地域包括支援センターを移転させ、同時に「高齢者見守り相談窓口」を設置、独居高齢者らの支援体制強化を図った。具体的には、 1.1年間で約5000の全高齢者世帯を個別に訪問し、安否確認と生活実態を把握 、2.孤立対策事業への参加の支援、3.市民による見守りの強化、4.在宅医療・介護連携の推進、などを実施した。

多摩市永山地区での高齢化の進展状況
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(多摩市役所・伊藤重夫氏らの講演資料より)

 成果としては、まず年間6000件の様々な相談が窓口に寄せられたことがある。また1では、4000人を超える高齢者の実態を把握し、必要な場合は医療機関などに紹介して疾病の重症化予防につなげた。3では65人の見守りサポーターを養成。こうした取り組みにより、自治会、NPO、介護保険事業者団体などとの新たな連携が生まれ、独居高齢者の無縁化を防ぐことにつながっているという。

 シンポジウム46「リハビリとまちづくり」では、荒川区健康部健康推進課の尾本由美子氏が、2002年から東京都立保健科学大学(現首都大学東京)や区民モニターなど、官学民で開発した高齢者の脚力低下を防ぎ転倒を防止するための「ころばん体操」の効果について報告。区民が自主的に実施している会場を含め、現在では70歳代を中心に年間のべ8万人が参加するまでになった。荒川区民の健康寿命は、2006年から2017年までの11年間に、男性が0.8歳、女性が0.9歳、それぞれ延伸しており、「ころばん体操」はこれに寄与したとみられている。

 荒川区ではその後も、バンドを使って筋肉トレーニングなどを行う「せらばん体操」やそれを椅子に座って行う「ちぇあ」ばん、さらに子供や若い世代向けの「あらみん体操」といったオリジナル健康づくり体操を開発し、普及を図ってきた。「幸福実感都市あらかわ」のスローガンの1つに掲げる、「生涯健康都市」づくりの方策として取り組んでいる。

 在宅医療・介護にかかわる様々な職種約5000人が参加して、活発な議論を繰り広げた第1回日本在宅医療連合学会大会。次回は来年6月下旬に、名古屋市で開催される。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/report/073100200/