健康づくりにおいて薬局の役割は重要

 ドリームゲート代表の村上勇氏はもともと実業団のバレーボール選手として活動した後、医療連携を進める仕事に20年以上にわたって携わり、フィットネスジム事業を立ち上げた。同氏は、町が健康課題を設定し、それを実現するための事業づくりを進めているのは重要なポイントと見る。

 今回の産官学のプロジェクトでは、町が健康施設を作って、その運営を単純に委託しているわけではない。町は参加者の一部であり、企業や大学が健康課題を推進しながら、事業としても自走するように計画している。健康事業をコストとしてとらえるのではなく、ウェルベース矢巾を中心として収入を得ながら、経済的に無理のない形で継続しようとしているのは重要だ。村上氏も、ウェルベース矢巾の事業は、3年間、町の支援を受けた後、自立して収益を得ながら運営する見通しだという。メディカルツーリズムならぬ、「ウェルネスツーリズム」「ヘルスツーリズム」といった、健康づくりと観光、旅行を組み合わせるような事業も考えられる。

「岩手医大前薬局」の健康チェックカウンター
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 村上氏は健康づくりにおいて薬剤師や管理栄養士が常駐する薬局の役割も重要な意味を持つと指摘する。「薬やサプリメントを正しい知識の元に提供する。筋肉をつけるためのプロテインなど、同じ説明するのでも薬剤師や管理栄養士からの説明であれば伝わりやすい。さらにフィットネスが病院や調剤薬局と連携できるのは安全や安心の要件を満たしてくれる。健康の情報を発信する上でもプラスになる。人々にメディカルフィットネスの恩恵を受けていただく上で薬局の役割は大きい」

 村上氏は、「こうした健康事業に町民の5%でも参加すれば画期的だ。将来的には町民の100%くらいが健康事業に参画し、本当に健康な町と発信してくれたらいいと思う。これがモデルとなり、健康のバトンをつなげてくれればいい」と話す。

ドリームゲート代表の村上氏(写真:取材時のオンライン画面キャプチャー)
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 医療機関や健康施設を中心にして新しい産業づくりにまでつなげようとしているのは重要だろう。米国のロチェスター市はかつて何もなかった地方の田舎町だったが、メイヨークリニックという医療機関の開設が町を発展させる核になった(関連記事)。岩手県の矢巾町で実現しようとしているのは、まさに日本のある地方の町にメイヨークリニックをつくるような取り組みといえるかもしれない。実際に矢巾のプロジェクトの中には、メイヨーを意識する考え方もあるようだ。まさに、矢巾のまちづくりは、これから未曾有の超高齢社会に突入する日本の町づくりの手本を指し示している。

(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)