山梨大学生命環境学部地域社会システム学科の田中敦教授・西久保浩二教授とマーケティングリサーチ会社であるクロス・マーケティングとの研究グループは、直近1年間にワーケーションを実施した1000人を対象とした実態調査「ワーケーションに関する調査」を5月に公表した。「新・公民連携最前線」では発表後に概要を掲載したが(関連記事)、今回は調査結果について、さらに詳しい分析を田中教授に聞いた。

 「ワーケーションに関する調査」は、ワーケーション経験者1000人を対象とした調査だ。この調査の意義について、山梨大学生命環境学部地域社会システム学科の田中敦教授は「実際にどこで、どのようにワーケーションを行っているのか、ワーケーションの同行者はいるのかなど、日本のワーケーション実施者の行動特性を明らかにできたことが大きい」と語る。

場を変えることに意義? 多数はバケーションより仕事中心

 調査ではまず、ワーケーションの実施場所について聞いた。すると「自宅や会社から離れた観光地」(ホテル・旅館・キャンプ場等)で行ったと答えた人が49%と最も多く、仕事をした施設は「ビジネスホテル」43.1%、「リゾートホテル」31.4%、「シティホテル」27%と、多くがホテルを選んでいるが、「旅館」も19.6%となっており、温泉地などの観光地で、かつWi-Fiなど通信環境の整備、機能性が備わった施設が好まれたことが分かる(図1)

図1●ワーケーションは「自宅や会社から離れた観光地」で行った人が約半数(資料:山梨大学)
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 注目したいのが、「ワーケーション実施時の働き方」だ。

 観光庁はワーケーションを「福利厚生型」(有給休暇を活用してリゾートや観光地などでテレワークを行う)、「地域課題解決型」(地域関係者との交流を通じて地域課題の解決策を共に考える)、「合宿型」(場所を変え、職場のメンバーと議論を交わす)、「サテライトオフィス型」(サテライトオフィスやシェアオフィスでの勤務)の4つに分類しているが、田中教授は今後さらなる分析が必要としながらも、今回の調査では「サテライトオフィス的にワーケーション先を活用する層と、休暇の中で仕事をするという層が存在することわかった」と言う。田中教授は次のように分析する。

 「『業務時間内は仕事中心で、業務時間外も遊びや観光・地域での交流は行わない』(22.1%)層が最も多く、この層のワーケーション実施者は、観光よりも、単に“場を変えること”に意味を感じているのではないかということが読み取れる。一方で『業務時間内は仕事中心だが、業務時間外は積極的に遊びや観光・地域での交流活動を行う』という回答者が21.3%と、仕事以外の時間でも遊びや観光をしない派と、仕事以外の時間を、観光や遊びに利用する派が同程度存在していた(図2)。これは、休暇中でも物理的に仕事ができるようになったからこそ、旅行ができるようになった層が一定程度いるということでもあると考えられる」

図2●業務時間外に「遊びや観光・地域での交流」を行う層と行わない層は、それぞれ2割強(資料:山梨大学)
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 ただ、仕事中心層に関しては、調査が行われたのが新型コロナウイルス感染症の影響が強い時期だという点は注意が必要だ。特にワーケーションを実施した時期を過去1年以内としているため、外出しづらい環境下で、これまでは個々に活動していた家族が強制的に「閉じ籠る」ことでのストレスがあったことが想定できる。ワーケーションを行う際は1人だった(一人旅)と回答した人が47.3%と最も多かったが(図3)、この中には、1人になれる場所を求めてワーケーションを実施した人も少なからずいたということも考えられる。

 「一人旅」以外で多かったのは、配偶者や恋人の二人旅が24.4%、子供を含む家族旅行が22.3%だった(図3)。カップルやファミリー層であっても、旅行を兼ねていたケースだけでなく、ワーケーションの環境下でも観光で外出せずにインターネット環境を競って使うケースもあったのではないか、と田中教授は推測する。後者は、例えば子供のいる共働き家庭の場合、家族全員が家で仕事やオンライン授業を受ける必要がある場合(あるいはゲームや動画配信サイト視聴などをしている場合)である。

図3●ワーケーションは同行者を連れず一人で行う人が多い(山梨大学の資料を一部加工)
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