インターネットを活用した行政手続きを人々はどのように受け止めているのか――。日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが10代~70代の2065人を対象に独自調査をしたところ、興味深い事実が浮かび上がった。調査結果をまとめた特集の初回はネットサービスに対する不満を中心に取り上げる。

 まず行政関連の手続きや申請にネットサービスを使ったことがあるかを尋ねたところ、「ない」と答えた人は45.2%で、「ある」と答えた人(40.6%)を4.6ポイント上回った。半数近くは行政手続きにネットサービスを利用したことが1度もなく、いつも窓口に出向くか、郵送や電話を利用するという実態が分かった。

45%の人が行政手続きにネットサービスを利用したことがない
45%の人が行政手続きにネットサービスを利用したことがない
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不満がある人の半数超が「操作しにくい」と回答

 次に、行政関連の手続きや申請にネットサービスを使ったことがある人に、操作性や使い勝手に不満があるか聞いた。その結果、不満が「ある」と答えた人は45.1%に上った。

行政手続きに関するネットサービスに不満を持つ人が45%に上った
行政手続きに関するネットサービスに不満を持つ人が45%に上った
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 不満があると答えた人に具体的にどのような点が不満かを聞いたところ、最多だったのは「操作しにくい」で53.4%に達した。行政分野のネットサービスにおける最大の課題は、ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)などにあるという事実が浮き彫りになった。

 例えば自由意見には次のような声が寄せられた。「きちんと(登録などの操作が)できているか不安」(女性、45歳、東京都、会社員)。行政ネットサービスには、登録ボタンを押しても「登録が完了しました」といった画面が表れず元のままだったり、入力前のページに戻ってしまったりするケースが見られる。登録完了を知らせる画面を設けたり、申請がどこまで進んだか利用者が確認できる仕組みを盛り込んだりしたいところだ。

 「説明が分かりにくい」(男性、16歳、神奈川県、学生)という意見もあった。利用者が滞りなく入力などの操作を進められるよう、説明書きや入力順、画面遷移などの工夫が求められる。

「ブラウザー限定」に対する不満も

 自由意見には「ブラウザーによって使えないことがある」(女性、55歳、大阪府、パート・アルバイト)という書き込みが複数見られた。

 行政ネットサービスにおいて、ブラウザーの種類やバージョンを行政サイドが限定するケースは少なくない。利用者サイドからすると、せっかくインターネットで手続きしようと思っても手持ちのスマホやパソコンが対応していなければ利用できない。予算の問題もあるのだろうが、サービス向上の観点からすれば改善したいところだ。

 行政ネットサービスに対する不満の2位は「IDやパスワードの管理が面倒」(46.0%)、3位は「手続きごとにサイトがバラバラで不便」(40.5%)だった。4位以下は「目的のサイトを探しにくい」(37.8%)、「情報が見にくい」(32.8%)と続いた。

行政ネットサービスへの最大の不満は「操作しにくい」
行政ネットサービスへの最大の不満は「操作しにくい」
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 ここで紹介した1位~5位の不満点を踏まえると、UIやUXを改善し、さまざまな手続きを一元的に扱うポータルサイトのようなページを設け、目的別などの形で情報を整理するといった改善が求められそうだ。

 来るデジタル社会に向けて、中央省庁や地方自治体における行政手続きのインターネット活用拡大は待ったなしだ。2021年9月にはデジタル庁も発足する。市民の利便性向上と、快適で暮らしやすい社会インフラの整備に向けて、行政機関のデジタル活用力が一段と問われている。

「暮らしに関するアンケート」概要
 日経BPのICT(情報通信技術)領域のシンクタンクである日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボは、インターネットを活用した行政手続きの利用実態を明らかにするために「暮らしに関するアンケート」を実施した。調査対象は15歳~79歳の男女2065人、調査期間は2021年7月21日~2021年7月23日。回答者の属性は男性49.4%、女性50.6%。年代別に見ると10代6.0%、20代12.4%、30代15.6%、40代18.5%、50代15.4%、60代18.1%、70代13.9%(四捨五入の関係で100にならない)だった。未婚者が41.2%で既婚者が58.8%だった。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/report/082000282/