「ソーシャルインパクトボンドセミナー2018」(主催:社会的投資推進財団)が、8月1日に都内で開催された。慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授で、国の未来投資会議(議長・安倍晋三首相)のメンバーなどを務める竹中平蔵氏による基調講演をリポートする。「成果連動型民間委託事業―未来投資戦略における位置づけと政府の取組」と題した講演で竹中氏は、今後の普及促進などについて語った。

竹中平蔵氏(写真:山田雅子)

 6月15日に閣議決定した「未来投資戦略2018」では、PPP・PFI手法の導入加速を、重点的に取り組むべき項目の1つとして挙げている。その中の具体的施策として盛り込まれたのが、民間のノウハウや資金を活用し、行政の財政コストを抑えながら、社会的な課題の解決や行政の効率化などを実現する仕組みである成果連動型民間委託契約方式の普及促進だ。

 竹中氏は、成果連動型民間委託が未来投資戦略に盛り込まれたことについて、次のように解説した。

 「成果連動型民間委託とは、従来の業務委託とは異なり、民間の方がうまくいく領域であればやり方も任せる代わりに、成果も求める。そして、その成果に対して行政からの支払いがなされる。財政コストを抑えながら成果を求めることが、結果的に官業の民間開放につながる」

 「成果連動型民間委託が、今回、『未来投資戦略2018』に正式に盛り込まれたということは、政府の成長戦略の1つのフェーズの中に位置づけられたということだ」

 「未来投資戦略2018」では、成果連動型民間委託の普及促進に向けて、これから内閣府が具体的に取り組んでいく内容が盛り込まれている。竹中氏はそれを、次の5つのポイントに整理して説明した。

  • 必要な体制の整備
  • ガイドラインの策定
  • 地方公共団体へのインセンティブ
  • 複数年契約の導入
  • 成果が出た分野の横展開

 まず、「必要な体制の整備」について竹中氏は、「内閣府が、関係省庁からの人材登用を進めて必要な体制を整備すると明記された。成果連動型民間委託の政策を担当する責任部署が内閣府の中にできるということが明確になった」と解説した。

 2つ目の「ガイドラインの策定」については、モデル事業の組成や評価指標の標準化、契約条件など分野別のガイドラインと、必要に応じて分野横断的なガイドラインの策定を行うことが「未来投資戦略2018」に記されている。成果連動型民間委託の1つであるSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)については、既にいくつか市町村でモデル事業が実施されているとはいえ、本格的な普及を目指すには、モデル事業を標準化し、手続きなどを定めたガイドラインが不可欠となる。

 3つ目は「地方公共団体へのインセンティブ」だ。この点について「未来投資戦略2018」は、成果連動型民間委託の案件組成に向け、具体的な支援策の検討と、国庫補助や地方交付税措置の点検などを行うこととしている。「ごく単純化して言うならば、地方公共団体が努力して行政コストを削ると、その分、国から与えられる地方交付税が削られることになる。それでは、手続きが煩雑になっただけでメリットがない」(竹中氏)というわけだ。竹中氏は、地方公共団体側に何らかのインセンティブが働かなければ、「意欲ある首長が取り組んでいるだけ」という段階にとどまってしまいかねないという危機感を訴えた。

 「複数年契約の導入」も重要だ。成果連動型民間委託契約で実施する事業は、評価指標に沿って成果を出すまでに一定の期間を必要とする。契約の締結や予算の執行は単年度が原則であるが、これに縛られると普及促進の妨げになる。そこで今回の「未来投資戦略2018」の中では、国が成果連動型モデルの実証事業を実施する場合には、「債務負担行為を活用して複数年契約を締結するよう努める」と明記された。

 竹中氏が5つ目のポイントとして挙げたのが「成果が出た分野の横展開」である。これまでのように意欲的な地方公共団体だけが取り組む状況を脱し、国全体の制度として成果が出るようにするに、必要な情報の周知などを図って横展開していくことが必要だ。

 竹中氏は、これらの点が盛り込まれた「未来投資戦略2018」について、「あくまでも出発点に過ぎないが、今後の成果連動型民間委託契約の普及促進の上で、極めてエポックメイキングなものと言えるだろう」と評して基調講演を締めくくった。