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「ソーシャルインパクトボンドセミナー2018」リポート(2)

SIBは「3.0」の時代へ、ケビン・タン氏

成果連動型モデルの導入をきっかけに、目標と達成度を可視化

山田 雅子=ライター【2018.9.5】

「ソーシャルインパクトボンドセミナー2018」(主催:社会的投資推進財団)が、8月1日に都内で開催された。世界各国で数々のソーシャルインパクトボンド(成果連動型モデルの一形態、以下SIB)のプロジェクトに携わってきた、サードセクター・アジア創業者のケビン・タン(Kevin Tan)氏が登壇。「アジアで広がる成果連動型モデル―欧米における進化とアジアモデルの可能性」と題した基調講演を行った。

ケビン・タン(Kevin Tan)氏(写真:山田雅子)

 ケビン・タン氏は2015年、成果連動型モデルの案件組成を支援する非営利団体、サードセクターキャピタルパートナーズに入社。その後、サードセクター・アジアを創業した。世界各国で、これまでに10件のSIB事業を立ち上げ、現在は準備段階にある30件のプロジェクトを抱えているという。事業領域は、児童福祉施設、刑務所、ホームレスの自立支援、メンタルヘルスなど広範にわたる。

 タン氏は、成果連動型モデルとその一形態であるSIBについて、こう説明する。

 「従来の公共事業は、効果を検証するプロセスがなく、実効ある事業に予算が配分されないという問題点があった。一方で、成果連動型事業は、事業者にとっては、成果が出るまでの間のキャッシュフローとリスクが負担になる。成果が出るまでに数年を要する場合は特にそうだ。この問題を解決するのがSIBだ。SIBは、投資家が資金を提供し、その資金を元手に事業者が事業を実施し、第三者による評価が行われ、成果があった場合に、行政から投資家に元本と金利が支払われるという仕組みだ。このように、ファイナンスと民間事業者の活用によって、イノベーションも促進するのが成果連動型モデルだ」

 そしてタン氏は、SIBのこれまでの歩みと今後の展開を、スタート時の「1.0」、普及モデルが確立する「2.0」、本格的な拡大期に突入する「3.0」という3段階のプロセスで説明した。

 タン氏によると、現在は、「1.0」から「2.0」への移行期であり、直面している課題は、圧倒的に規模が足りないことだという。「世界中のSIB事業を足しても、その投資金額は10億ドルにも達しない。他方、例えば米国政府がソーシャルサービスに支出している金額は、年間約2.4兆ドルにも及ぶ。10億ドルと2.4兆ドルの差を埋めていかなくてはいけない」(タン氏)。

 この規模の課題を解決するための取り組みも進みつつある。タン氏は、「既存事業の成果連動型モデルへの移行」「ファイナンスの変革」「ビッグデータの活用」「政策の後押し」の4つの視点が必要だと語る。

 そしてタン氏は、この「4つの視点」に関連するトピックをいくつか披露した。例えば、サードセクターキャピタルパートナーズは、スタンフォード大学と連携し、税金のデータベースにアクセスできるようになっている。所得へのインパクトを測定するなど、正確な効果測定にビッグデータを役立てる取り組みが米国では始まっているのだ。政策面では、米国政府による成果連動型事業のためのファンドには、約1億ドルが投じられているという。

 今後迎えるであろう「3.0」は、本格的な普及・拡大のフェーズとなる。この段階に進むためには、「システム全体を変え、投資家・サービス提供者・データ収集者の間の情報の流れを双方向にする必要がある。データを活用して、投資家が成果を知り、事業者は自らサービスを改善できるようにしていくことだ」とタン氏はと説く。

 そして、それを実践しているのが、タン氏が取り組んでいる米国での最新のプロジェクトだ。ワシントン州キング郡において、年間延べ5万5000人の精神疾患の患者が受ける医療サービスを、成果連動型モデルに移行するという内容だ。サービス提供者は任意で事業に参加できる。事業者に対して成果指標を示し、インセンティブを提供することで、参加しやすい仕組みをつくっており、現在、30事業者が参加している。

 タン氏は言う。「事業者にとって重要なことは、政府のデータを使い、自分たちのサービスをリアルタイムで改善できるということだ。本来、成果連動型であろうとなかろうと、成果を評価する物差しを作ることは必要なことだが、成果連動型モデルの導入がきっかけとなり、目標と達成度が可視化された。様々な尺度で成果を測れるようになったのだ。成果連動型モデルは、プロセス自体に非常に価値がある」。

 アジアは状況が異なるが、欧米の事例から得られる教訓は多いとタン氏は言う。「我々は既に韓国、中国、マレーシア、タイ、シンガポール、インドなどアジア各国での取り組みを始めている。アジア、なかでも日本では、欧米とは違うことができるのではないかと期待している。日本は高齢者、認知症、運動プログラムなど、他国にない取り組みを行っている。これは高齢化社会の日本が世界に先駆けてできることであり、世界も注目している」(タン氏)。

 最後に、タン氏は、日本で成果連動型モデルを加速させるためのポイントを4点挙げた。「仕組みをシンプルにすること」「成果として何を達成すればいいのか、詳細まで詰めること」「未知の取り組みには予想外の問題が起きるので、『想定外がある』と想定しておくこと」そして「プロセスに価値があると認識すること」だ。

 「成果連動型モデルを始めると、事業者、投資家、政府も皆が『非常にいい経験になった』と言う。誰にサービスを提供し、成果をどう評価するのか、みんなの認識を共通にできる。これこそが成果連動型モデルがもたらす効果だろう」とタン氏は講演を締めくくった。

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