国の後押しと規模の拡大を

 両者の説明の後、取り組みを通じて気づいたことや、今後、成果連動型民間委託事業を推進していく上での課題について意見交換が行われた。

 「当初は、『事例ができてから検討する』と様子見の自治体が多かった」と、振り返るのは幸地氏だ。ところが、八王子市や神戸市の事例を携えて再訪しても、やはり反応は鈍かったという。

 「事例ができたので、同じ事業なら他の自治体でもすぐに導入できるのではないかと思った。だが話を聞くと、内部で調整しながら新しいことを進めていくには、他の自治体が同じような事業をしているだけでは不十分だと分かった。予算要求が難しく、国によるガイドライン整備などの後押しがないと、自治体単独で進めるにはハードルが高い」

 基調講演で登壇した竹中平蔵氏も、自治体が独自に取り組むことの難しさを指摘する。

 「現状は、コストを削減した分、地方交付税が減らされるというディスインセンティブが働く。空港のコンセッションのように、まず国のプロジェクトとして始めて、それを浸透させる必要があるのではないか。人口20万人以上の自治体には導入を義務付け、やらなければ地方交付税を減らすといったマイナスのインセンティブを与えるくらいの大きな改革が必要ではないか」

 成果連動型モデルの推進には、規模拡大が不可欠で、そのためにはサービスを提供する民間の事業者側と自治体側の双方にやるべきことがあると指摘するのは、ライザップの松岡氏だ。

 「まずは、事業のスケールメリットを出せるサービスを民間側が提供できるかだ。ライザップのサービスを例にとると、伊那市で実施した1人あたり5万円は、やはりまだ高い。しかし、プログラムへの参加者数が増えれば劇的にコストを下げられる。自治体側に求められるのは、やはり、広域連携など、より大きな単位で事業を実施することだろう。ライザップも当初は市町村単位で始めたが、県単位、国単位でもできると考える」

 さらに松岡氏は、現在の事業規模では、SIBの資金の出し手となる金融機関から見ても魅力に乏しいと付け加え、スタジアム/アリーナなどの施設運営と健康増進サービスを組み合わせることによる事業規模拡大の可能性を指摘した。

 竹中氏も、規模拡大の重要性に賛同。中国の電子商取引最大手、アリババ集団の本社がある杭州市では、同社と行政が連携して、ビッグデータを渋滞解消などの都市運営に活用しているケースを紹介。「日本では、今は着実なところから成果連動型モデルを始めるが、最終的には、都市の運営も委託の対象になり得る。ぜひ大きなスケールの事業を目指してほしい」(竹中氏)と語った。