問題はデータが統合されていないこと

 議論は、成果連動型モデルの推進に不可欠なデータの集約にも及んだ。工藤氏は、「米国では、行政のソーシャルセクターのデータがかなりの精度でそろっている。例えばホームレスの支援事業を手がける際に、ホームレスの人数や何日間路上で生活しているかといったデータもすべてそろうと聞いた」と言及。基調講演にも登壇したケビン・タン氏に実情を聞いた。

 タン氏は、先進国である以上、データはどこかにあるはずで、問題はそれらのデータが統合されていないことだと指摘する。「米国は、データは個人に紐づいている。例に挙がったホームレスのケースでは、ホームレスのシェルターがデータを持っている。連邦政府は、シェルターが予算を受け取る際に、標準のフォーマットでデータベースに入力することを義務付ける。そのような形でデータが一本化され、誰がサービスを提供し、予算はどこから出て、どのような効果が出ているのかなどが可視化されている。日本も、第一段階としてはデータを一本化する必要があるだろう」(タン氏)。

 県と市町村の広域連携のプロジェクトを手がける幸地氏も、「各自治体でデータの持ち方が異なり、それらを統合して使える状態にするのにコストがかかり、集約によるコスト削減効果が薄れた」と打ち明ける。

 このほか、会場からは「業務委託ではなく、なぜ、わざわざ成果連動型にする必要があるのか」という直球の質問も寄せられた。「必要な事業なら、成果連動型にするまでもなく予算をつける」というわけだ。

 これに対し幸地氏は「必ずしもすべての事業を成果連動型にする必要はないが、行政サービスの成果の可視化とモニタリング、および、そこにお金を紐づけることはやるべきだ。しかし、現状は形骸化している。どうすればインセンティブや成果向上につながるかの検証が必要だ」と成果連動型の意義について回答した。

 最後に、日本での普及促進に向けた各氏からの提言で、パネルディスカッションを締めくくった。

 「成果連動型モデルに参入したい事業者は、データを蓄積し、事業の成果を可視化することだ。最終的には、行政がその成果にお金を支払う意図があるかどうかにかかっている。普及促進に不可欠な規模拡大に向けては、ヘルスケアなど特定の領域に注力し、ノウハウを積み重ねて横展開することと、ビッグデータやブロックチェーンなどのテクノロジーを活用して中間コストを低減することが必要だろう」(幸地氏)。

 「事業規模が重要だ。我々は、ライザップにしかできない役割を追求し、ヘルスケア領域では、国単位で考え、さらには同じ課題を持つ海外に横展開することにも挑戦したい」(松岡氏)。

 「SIBは、より大きなムーブメントの第一歩に過ぎない。我々は、アジアで大きなプロジェクトを1~2件、開始する予定だ。成果連動型モデルの発展に向けては、システムチェンジが不可欠だろう。我々としては、これまで十分にできていなかった予測的分析を進めていきたいと思う」(タン氏)。

 「成長戦略の中で、内閣府が専門の部署を作ると明言した。成果連動型民間委託が正式な政策イシューになったということで、ようやくスタートラインに立った。パブリックサービスの需要は膨大で、これからも拡大する。すべてをガバメントセクターだけではできないと認識して、成果連動型モデルを進めていく必要がある」(竹中氏)。