バラバラな運営主体をコンセッションで一本化

 加えて県は、大分空港へのコンセッション方式導入を検討している。国は県の依頼を受けて、大分空港のデューデリジェンス(資産査定)を2020年4月に開始。このほど中間報告をまとめたが、内容は「非公表」(国交省航空局航空ネットワーク部航空ネットワーク企画課)としている。また、国交省は2021年8月16日、大分県の要望を踏まえ、大分空港へのコンセッション導入に関する民間事業者へのヒアリングを始めると発表した。コンセッション導入の可能性や事業スキームを検討したり、課題を整理したりするのが目的だ。関心表明書などを9月10日までに提出した民間事業者に対し、守秘義務対象の資料を8月23日~10月15日に開示して、意見を募っている。

 県がコンセッション導入を検討する理由はいくつかある。1つは、空港の施設によって運営主体が異なること。現在、滑走路やエプロン(駐機場)は国、ターミナルは県の第三セクター、駐車場は国の外郭団体である一般財団法人が運営している。これをコンセッションによって民間事業者に一本化することで、戦略的な空港経営をしやすくする狙いがある。

 このほか、航空ネットワークの拡大、駐車場の拡張、二次交通の充実、ターミナルビルの拡張といった、空港活性化に向けた取り組みや利用者のニーズへの対応がしやすくなること、さらに民間事業者の資金とノウハウを活用できることも、県がコンセッション導入を検討する理由だ。

 県は今後、国によるデューデリジェンスや民間ヒアリングの結果を踏まえ、地元関係者の意見を聞いたり、コロナ禍で落ち込んだ航空需要の回復状況を見極めたりしながら、コンセッションを導入するか決める。導入しない場合、運営方法などは現状のままとなる見通しだ。

 国交省から出向している大分県企画振興部参事監兼企画振興部交通政策課長の遠藤健人氏は「民間のノウハウを生かした創意工夫や、自由度の高い運営ができる手法を検討していく」と話す。さらに遠藤氏は「例えば大分空港に到着して熊本空港から帰るルートをつくるなど、九州全体で連携して、お客さんを呼び込むことも大切だ」と指摘する。

 ただし、コロナ禍が長引いた場合、コンセッションにどれだけの事業者が参画するかは未知数だ。同じ九州でコンセッションを導入した福岡空港や熊本空港は、コロナ禍に見舞われて赤字にあえいでいる。今後、民間事業者のアイデアなどをうまく生かすことができれば、宇宙港化とホーバークラフト運航と相まって、大分空港の魅力アップになるだろう。

 なお大分県は、打ち上げ開始後5年間で県内に波及する経済効果が102億円に達するとの試算を2021年3月にまとめている。世界中の打ち上げ記録を基に、5年間で18回打ち上げると想定(1、2年目に1回ずつ、3年目に3回、4年目に5回、5年目に8回)。102億円の内訳は、射場(打ち上げ施設)の運営効果が約31億円、建設投資効果が約15億円、観光消費効果が約56億円だ。

大分空港の展望デッキ(写真:中川 美帆)
大分空港の展望デッキ(写真:中川 美帆)
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政府の成長戦略も宇宙港を後押し

 宇宙港の整備は世界中で進みつつある。OSFCによると、既に稼働もしくは計画が具体化しているのは米国、ブラジル、英国、イタリア。さらに、ポルトガル、エクアドル、マレーシア、シンガポール、オーストラリアが宇宙港の開設を検討中だ。

 日本政府も宇宙事業を進めている。2021年6月18日に公表された成長戦略の実行計画には、米国宇宙産業との協力なども視野に入れながら、宇宙港の整備などによって、アジアにおける宇宙ビジネスの中核拠点化を目指すことが明記されている。

 さらに、政府が6月30日に閣議決定した新たな「宇宙基本計画」によると、日本の宇宙産業の規模(約1兆2000億円)を2030年代の早期に倍増、つまり約2兆4000億円にすることを目指している。

 順調に計画が進めば国内第一号となる大分空港で計画されているのは、前述の通り飛行機に搭載したロケットを上空から射出する「水平型」だ。水平型の場合、空港施設を活用できるので、大規模な設備の建設が不要だ。射場周辺の天候にあまり影響を受けないというメリットもある。垂直型だと、例えばカミナリ雲が発生して打ち上げが延期になるといった事態も起こりうる。

 水平型は米国では実績があるが、アジアでは例がない。現在、国内でロケット打ち上げを予定している地域のうち、水平型を本格的に検討しているのは、大分空港と下地島空港(沖縄県)の2カ所だ。

 PDエアロスペース(愛知県)は2020年9月11日、有人宇宙旅行の実現に向け、機体開発と並行して、下地島空港における宇宙港の整備に取り組むと発表した。下地島空港にも、大分空港と同じく3000mの滑走路がある。ちなみに下地島空港は民営化され、三菱地所などが運営している。

「水平型」を予定する下地島空港にも3000mの滑走路がある(写真:中川 美帆)
「水平型」を予定する下地島空港にも3000mの滑走路がある(写真:中川 美帆)
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 一方、和歌山県串本町で打ち上げ計画が進んでいるのは垂直型だ。主導するのは、キヤノン電子、清水建設、IHIエアロスペースなどが出資する事業会社スペースワン(東京都港区)。太平洋に面した本州最南端の町の串本町に、小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」を建設している。

 北海道大樹町では、町や同町に本社を構えるインターステラテクノロジズ(IST、実業家の堀江貴文氏らが参画する宇宙ベンチャー)などが出資して、事業会社SPACE COTAN(大樹町)を2021年4月20日に設立。射場や滑走路などの複合施設を本格稼働させた。ISTはすでに大樹町から観測ロケット「MOMO」を打ち上げている。今後は、新たな射場を建設する計画や、滑走路の長さを現在の1000mから1300mに延ばす計画もある。

 国内では人工衛星をロケットで打ち上げられる場所が足りない。そのため、米国やカザフスタンから打ち上げた日本の企業もある。大分空港を皮切りに国内で宇宙港が整備されれば、こうした問題の解消にも一役買いそうだ。