「Beyond Health」2019年10月1日付の記事より

 治療用アプリの開発を進めるヘルスケアスタートアップのキュア・アップ(関連記事)。同社は今、大阪府豊中市などと共同で「とよなか卒煙プロジェクト」に取り組んでいる。

 とよなか卒煙プロジェクトは、喫煙や受動喫煙による疾病の予防と健康寿命の延伸を目的に禁煙への動機付けや禁煙支援を行う事業。キュア・アップのアプリを用いた「ascure(アスキュア)卒煙プログラム」(詳細は後述)を活用する。豊中市在住か在勤者が対象で、実施期間は2019年6⽉28⽇~2022年3月末までだ。

『豊中市在住・在勤の喫煙者に対する禁煙支援事業』民間資金を活用した成果連動型業務に関する基本合意書調印式の様子。この調印式自体は2019年5月末に実施された(出所:豊中市)
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 この取り組みで特徴的なのは、民間から調達した資金で事業者が行政サービスを市民へ提供し、その成果に応じて行政が委託料を支払う官民連携手法、いわゆる「ソーシャル・インパクト・ボンド」(以下、SIB)を用いる点だ。今回のケースでは、三井住友銀行と社会的投資推進財団が主な資金提供者となる。資金調達のために、SMBC信託銀行が信託機能を提供、キュア・アップは信託受益権の販売をプラスソーシャルインベストメントへ委託する。社会的投資推進財団が中間支援組織としてプロジェクトの管理運営などの支援を担う。

 2019年9月に都内で開催されたメディアセミナーでは、今回の取り組みに参画している各団体・企業の担当者が登壇。それぞれの立場からプロジェクトへの関わりなどについてのプレゼンテーションが実施された。

民間からの資金提供の機運は高まっている

 初めに、社会的投資推進財団 代表理事の青柳光昌氏が登壇。SIBという手法についてあらためて説明した。

社会的投資推進財団 代表理事の青柳光昌氏(写真:近藤 寿成、以下同)
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 一般に、行政サービスの民間委託には、「行政」「事業者(NPO、民間企業など)」「受益者」の3つが存在し、まずは行政と事業者が業務委託契約を結び、事業者が受益者に対してサービスを提供する。そして、委託業務の履行に対して行政から事業者に支払いが発生する。

 一方、最近注目を集めているのが「成果連動支払い」の業務委託。行政と事業者が業務委託契約を結び、事業者が受益者に対してサービスを提供する点は同じだが、成果の目標値が設定され、「第三者評価者」による客観的な評価・報告が加わるというのが相違点だ。行政から事業者に支払われる委託料は、その成果に応じた金額になる。

 そして、この成果連動支払いの業務委託に民間資金を投入する仕組みがSIBである。民間の資金提供者にとっては、自分たちの資金が公益の仕事に使われ、良い結果が出れば「社会に対するインパクトと経済的なリターンがしっかり得られる」(青柳氏)という特徴は魅力的であるため、民間からの資金提供の「機運は高まっている」と同氏は語る。

 現在、日本でのSIB導入数は大小合わせて20件ほど。この中で案件が増えているのが、ヘルスケア分野だという。